定数係数1階線形微分方程式

微分方程式というのは,その名の通り方程式に微分が入っている, つまり導関数が入っている方程式のことです. いろいろな形( 変数分離形 など)があるのですが,ここではつぎのようなものを学びます. a を定数, Q(x) をある連続な関数とするとき, x の関数である未知関数 y と,その導関数 dy/dx に関して1次式である,

\frac{dy}{dx}+ay=Q(x) \tag{1}

のうな形で表される微分方程式です. これを,定数係数1階線形微分方程式といいます. この形の微分方程式について,これからお話します (え,なぜかって?そりゃあ,よく使うからですよ♪).

定数係数1階線形微分方程式の解の公式

いきなりですが,いま考えている微分方程式の解の公式を示します.式 (1)

\frac{dy}{dx}+ay=Q(x)

の一般解は

y=e^{-ax}\left\{\int e^{ax}Q(x)\,dx + C\right\} \tag{2}

で与えられます.ここで C は任意定数です.

未知関数 y についての微分方程式を「解く」とは, おおざっぱに言うと y= の形に持って行く,ということです. ですから,式 (1) が式 (2) に変形できることが分かっていれば, これはもう,いつでも解けるわけです. といっても,こんな公式を丸暗記していたら大変です. 手順を理解し,いつでも導出できるようにすることが重要です.

導出

ではここで,式 (2) を導出してみます. まず,積分を簡単にするために式 (1) の左辺

\frac{dy}{dx}+ay

\frac{d}{dx}F(x)

のような,「ある一つの関数 F(x) の微分」の形に変形することを考えます. そのために,式 (1) の両辺に e^{ax} をかけますと

e^{ax}\frac{dy}{dx}+ae^{ax}y=e^{ax}Q(x)

となります.ここで, e^{ax} の微分が ae^{ax} となる性質を思い出します. すなわち上式は

e^{ax}\frac{dy}{dx}+\left(\frac{d}{dx}e^{ax}\right)y=e^{ax}Q(x) \tag{3}

と変形できることになります.ここまで,よろしいでしょうか.

さらにもう一つ,積の微分公式

\frac{d}{dx}f(x)g(x)=\frac{df(x)}{dx}g(x)+f(x)\frac{dg(x)}{dx}

を式 (3) の左辺に適用します.すると

e^{ax}\frac{dy}{dx}+\left(\frac{d}{dx}e^{ax}\right)y=\frac{d}{dx}\left(e^{ax}y\right)

がいえます.これは最初目指していた形です.ですから結局,式 (3) は

\frac{d}{dx}\left(e^{ax}y\right)=e^{ax}Q(x)

という形になるのです.ここまでくれば簡単,あとは両辺を x で積分して

e^{ax}y=\int e^{ax}Q(x)\,dx+C \tag{4}

が得られます.ここで C は任意定数です. 左辺を「ある一つの関数 F(x) の微分」という形に 変形したかった理由は,このように両辺を一気に積分したかったからです. この方法は一般的に良く使うテクニックですので,憶えていておいて損はないでしょう.

最後に,式 (4) の両辺に e^{-ax} をかけますと,

y=e^{-ax}\left\{\int e^{ax}Q(x)\,dx + C\right\}

という,最初に示した式 (2) が得られるのです.

解の解釈

補足です. \frac{dy}{dx}+ay=Q(x) において Q(x)=0 の場合,すなわち

\frac{dy}{dx}+ay=0

の場合があります.これは同次方程式と呼ばれ, 変数分離形 になります. 他方, Q(x)\ne0 の場合は非同次方程式と呼ばれます. 同次方程式の一般解 Ce^{-ax}Q(x) の形と独立な解)と, 非同次方程式の特殊解 e^{-ax}\int e^{ax}Q(x)\,dxQ(x) の形に依存する解) の線形結合が,式 (2) の一般解になっています.

例題

それでは,簡単な例題を示しておきます.

例題1

つぎの定数係数1階線形微分方程式(長い名前だ…)

\frac{dy}{dx}+5y=6e^x

の一般解を求めます.まず,さきほどの導出の手順にしたがって, 両辺に e^{5x} をかけます.すると

\frac{d}{dx}\left(e^{5x}y\right)=6e^{6x}

となります(ここで一気に積の微分公式による変形も行っています). 上式の両辺を x で積分して

e^{5x}y=\int 6e^{6x}\,dx+C

となり( C は任意定数),さらに両辺に e^{-5x} をかけると

y&=e^{-5x}\left\{\int 6e^{6x}\,dx+C\right\}\\ &=e^{-5x}\left\{e^{6x}+C\right\}\\ &=e^x+Ce^{-5x}

という一般解を得ます.

例題2

速さ v に比例する抵抗が働くとき,質点の鉛直方向の運動方程式は

m\frac{dv}{dt}=-\kappa v+mg

と表せます.ここで m を質点の質量, g を重力加速度としています. この運動方程式は 変数分離形 として解くこともできますが, 定数係数1階線形微分方程式であるとも言えますので,これまでの方法で解いてみます.

式を少し変形して

\frac{dv}{dt}+\frac{\kappa v}{m}=g

両辺に e^{\kappa t/m} をかけ,積の微分公式から整理すると

\frac{d}{dt}\left(e^{\kappa t/m}v\right)=ge^{\kappa t/m}

両辺を t で積分して

e^{\kappa t/m}v=\int e^{\kappa t/m}g\,dt+C

を得,両辺に e^{-\kappa t/m} をかけると

v&=e^{-\kappa t/m}\left\{\int e^{\kappa t/m}g\,dt+C\right\}\\ &=Ce^{-\kappa t/m}+\frac{mg}{\kappa}

という速度の一般解を得ます.ここで C は任意定数です. ちなみにこういった任意定数は,初期条件に依って決まります. この例題について詳しくは, 抵抗力のある落下運動 をご覧ください.