この記事では,正五角形の作図を考えてみたいと思います. 作図できる正多角形 の結果より,正五角形は定規とコンパスで作図できる正多角形だということが分かりましたが,既に作図方法を知っている人もいると思います.ここでは,初等幾何としてではなく,代数学的な視点から捉えなおしてみることに意味があると思います.
正五角形の作図は,円周を つに等分する問題と同じです.ここで,
として,拡大体
を考えます.
の最小多項式は次式で,
は
の最小分解体になっています.
ここで を
上のベクトル空間と見たとき,
は基底を張っており,
の元は一般に
と書けます.(
が成り立つことに注意. 1のn乗根 参照.)拡大次数は
ですのでガロア群の位数は
で,
を置換する元からなります.これは,
と置くと,
と表わされる巡回群です.
自明な部分群を除くと, は正規部分群
を持ちます.(正規真部分群はこれだけです.)そこで,ガロア理論の基本定理により,
と
には中間体
が存在し,
がなりたつことが予想されます.つまり,
と表記すると,中間体
が群
の固定体になっているというわけです.( ガロア理論の基本定理 参照.)
ここまでは,既に勉強したガロア理論の基本定理から予想されるカラクリを書き並べてみただけですが,ここまでの説明に引っかかるところある人は,この段階でよく頭を整理してみて下さい.大事なのは,ここまでの大筋で,ここから先は実際の計算です.
まず, の元
が
に含まれる条件は,
の元が
で動かされないことですから
がなりたつことです.では,実際に計算して係数の条件を決めてみましょう.
の指数が
より大きくなると,
で
に戻ってくることに注意して下さい.途中の式変形は,添字の変化が分かりやすいように一行ずつ丁寧に書きました.
一行目と最終行を見比べて, となるのは
かつ
の場合であることが分かります.よって,
の元は一般に次のような形に書けることが分かります.(
と置きました.)
そこで,さらに と置くと,次のような興味深い関係が見えてきます.
これを見てピンッと来て欲しいのですが, は解と係数の関係より,方程式
の解となっています!!
[*] | 作図可能数について ギリシャ三大作図問題3 で触れましたが,作図可能数は有理数体 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
解の公式より, を求めることが出来ます.
ただし, と
の符号は,
の図形的関係から決めました.
これより,より具体的に であることが分かりました.
上の代数方程式を考えれば,
と
は
の解として,
と
は
の解として与えられます.
[†] | なんだかガロア群や同型写像を色々考えましたが,結局求めたいのは ![]() ![]() ![]() ![]() |
ここからはおまけですが,いよいよ作図法を考えることにします.図より, が作図できれば,
と
の中点から垂線を立て,頂点
,
が求まりますので正五角形が作図できることが分かります.
ですが,ピタゴラスの定理で
が成り立つことを使うと,意外と簡単に作図できます.以下に作図方法を解説しておきます.
【正五角形の作図法】