ベクトル場 をポテンシャル関数で表わせる場合,一般にはスカラーポテンシャル とベクトルポテンシャル を用いて,次のように表現されます.これを ヘルムホルツの定理 と呼ぶのでした.
特に と書ける場合を 層状ベクトル場 と呼びました.この記事では,逆に と書ける場合を考えます.
ベクトル場 が,ベクトルポテンシャルを用いて と表わせるとき,これを 管状ベクトル場 と呼びます.管状ベクトル場では, divrot=0 の関係式より,至るところ が成り立っています.発散が無いということは『流量が途中で増えたり減ったりすることが無い』ということですから,場の中に任意にとった流管内の流量は一定になります.恐らくこれが,『ホースの中の流れ』というイメージを喚起するので,管状ベクトル場と呼ぶのでしょう.(このイメージについては, ベクトル場の流束と流管 も参照してみて下さい.)
管状を,別名 回転的 と呼ぶ場合もあります.それは,場が で表わされる流れによるからで, も一つのベクトル場ですから,空間内の至るところに,色々な向きや強さの回転が存在するということです.(回転の意味やイメージについては, rot と ベクトル奮闘記3 を参照下さい.)層状ベクトル場の定理と同様,管状ベクトル場には次の定理が成り立ちます.
theorem
ベクトル場 が管状であるための必要十分条件は, となることです.
証明の中で, の成分 を使います.
proof
必要条件は より明らかです.十分条件を証明します. で,まず の第一成分 を任意の関数 とします.また, をそれぞれ で積分して , を得ます. と は何か適当な, を変数とする関数と置き, , を得ます.ただし, には, の表式 を満たす,という条件が付きます.(この条件を満たす限りで は任意です.)このように定めた を使って, を表わすと次のようになります. .一方, より, ですから, だけ移項して両辺を積分すると, を得ます. と見比べて,結局 が要請されます .ここまでの結果を使うと, と書けます.(ただし, は を満たすとします.)この は確かに のベクトルポテンシャルになっており,定理が満たされます.■
任意のスカラー関数に対して が成り立つことを考えると,ベクトルポテンシャルには, の形の差は許されることになります.
ベクトル場 が層状のとき, は管状になることを示して下さい.
ベクトル場 を と表現できるとします.このとき, は次のように表わすことが可能です.
式 の右辺の回転を実際に取り,この形が のベクトルポテンシャルになっていることを確認してみて下さい.