ベクトル解析奮闘記3

大学に入ると”ベクトル解析”を習うのですが,高校でやる”ベクトル”よりも ちょっと手ごわそうです.黒板に先生が書いた式も,難しそうだし・・・. もしよろしかったら私と一緒にベクトル解析の基本,やってみませんか.

(続き物なので ベクトル解析奮闘記1 からお読みいただくと嬉しいです!)

自宅で復習(rotの巻)

いよいよ最後, {\rm rot} .読みは”ローテーション”( rotation= 回転). 先生が黒板に書いた式は・・・,う〜ん, これは \partial ばっかりで, {\rm grad} よりも {\rm div} よりも,一層難しそうな顔をしている・・・.眺めていてもわからないので,先生が言われた”渦(うず)の事ですよ!”をヒントに,考えてみる事にしました.

小川の流れをヒントに

北から南に流れている小川があったとして,私が橋の上から南(下流)を見ていたとしましょう(下図参照).

yakan-vec3-fig1.png

普通のイメージでは,さらさらと渦など作らずに,東の岸付近の水も,西の岸付近の水も,平行に流れて行きますよね(もうすでに頭の中で渦が巻いている方もいらっしゃるでしょうか・・・).さて平行なはずの水流が,一体どうなれば渦を巻くのでしょう?まず東から西の方向・向きを x 軸, 北から南(水流と平行)に行く方向・向きを y 軸とします.もし東から西に行くほど( x 軸を正に行けば行くほど) 小川の流れが速いとすると,なんだか反時計回りに回り込んで,渦を巻きそうです.これは x の増加に対応する y 方向速度成分( y 方向の矢印の長さ.速度を長さで表しているだけで,長さの分,南に動くとは限らないし,もちろん y の値ではない.)の変化率が正という事です.水流の速度を表すベクトル関数を

\vec{A}=(F,G)

とすると, y 方向成分は,スカラー関数 G で表されるから,

\frac{\partial G}{\partial x}

が正で,なおかつこの値が大きければ大きいほど渦は強そうですね(下図参照).

yakan-vec3-fig2.png

でもそれだけでいいんでしょうか?

まてよ,もしかしたら,下流の方が上流より,東から西方向(小川の流れに直交する方向)への速度があるかもしれません.もしそうなら,さっきとは丁度逆に,時計回りの渦を作りそうです.これは,”下流に行く( y が増加する) ”ほど,”東西方向の流れが速くなる( F が増加する)”わけですから,同様に数式で表すと

\frac{\partial F}{\partial y}

となります(下図参照).

yakan-vec3-fig3.png

従って,反時計回り方向の渦は,それを差し引いた分,

\frac{\partial G}{\partial x}-\frac{\partial F}{\partial y}

が正で,値が大きければ大きいほど,強くおこりそうです.

渦の方向・向き

ところでこの渦,どの方向に向いていると表現したらいいのでしょうか? x 軸方向?それとも y 軸方向でしょうか? でも,見る間にぐるぐる回っているので,いずれの方向で表すのも難しそうです.むしろ渦の真中に,水面と垂直に棒を立てて目印とし,”棒を軸とした周りの渦である”とした方がわかりやすそうですね.渦の強さは棒の長さで表せば,遠目に見ても一目瞭然です(下図参照).

yakan-vec3-fig4.png

x , y と来たので,棒の方向は z 軸になります.つまり z 軸方向の渦(これ以降,回転)はさきほどの式

\frac{\partial G}{\partial x}-\frac{\partial F}{\partial y}

と考えられます.ここで小川のイメージから離れますが,ベクトル関数を2次元(平面)から3次元(空間)に拡張して \vec{A}=(F,G,H) と置き, x 軸方向の回転についても,順に変数を入れ替えて,

\frac{\partial H}{\partial y}-\frac{\partial G}{\partial z}

y 軸方向の回転についても,順に変数を入れ替えて,

\frac{\partial F}{\partial z}-\frac{\partial H}{\partial x}

とできます.これらはそれぞれ方向の違う量なので,単純に足し算はできず,それぞれ回転の x 方向成分, y 方向成分, z 方向成分として下記のように列記するしかありません.

\left(\frac{\partial H}{\partial y}-\frac{\partial G}{\partial z},\frac{\partial F}{\partial z}-\frac{\partial H}{\partial x},\frac{\partial G}{\partial x}-\frac{\partial F}{\partial y}\right)

これはスカラー関数の三つ組みとも言えますが,それぞれを x,y,z 成分に持つ,3次元ベクトルとも考えられますね.このベクトルの事を \vec{A} の回転(またはローテーション),記号では, {\rm rot}\vec{A} と呼ぶようです.つまり回転軸は,より回転の強い軸方向に近く向いているわけです.なお普通は, \vec{A}=(A_x,A_y,A_z) という風に表記するので

{\rm rot}\vec{A}=\left(\frac{\partial A_z}{\partial y}-\frac{\partial A_y}{\partial z},\frac{\partial A_x}{\partial z}-\frac{\partial A_z}{\partial x},\frac{\partial A_y}{\partial x}-\frac{\partial A_x}{\partial y}\right)

という形になります(目が回りそう・・・).

一体,何の役に?

さて,この”回転”,何に使うのでしょうか?ベクトル解析全体が,電磁気学っぽいですが,棒の周りの”回転”というと,例えば,電線に電流を流した際に,周りにできる磁界ベクトルなどを表すのに使えるそうです.磁界ベクトルを \vec{H} , 電流密度ベクトルを \vec{i} とすると,

{\rm rot}\vec{H}=\vec{i}

となる・・・,そうですよ.

みなさん,これからもベクトル解析,電磁気学頑張って下さいね.応援してます!(^-^) (私も頑張ります(>_<))

(続き物なので ベクトル解析奮闘記1 , ベクトル解析奮闘記2 もお読みいただくと嬉しいです!)