ガウスの発散定理の応用

この記事では, ガウスの発散定理 から導ける応用的な定理を考えます.ガウスの発散定理がよく分かってない人は,先によく復習しておいて下さい.

【ガウスの発散定理】

\int \int \int  \limits _{V} {\rm div}\bm{A} dV = \int \int \int  \limits _{S} \bm{A} \cdot d\bm{S}    \tag{1}

派生する定理1

まず,特殊な場合として,ベクトル場 \bm{A} があるスカラー関数 \phi と適当な定ベクトル \bm{c} を使って \bm{A}=\bm{c} \phi と表わせる場合を考えます.このとき,式 (1)\bm{A}=\bm{c} \phi を代入すると次式を得ます. {\rm div}(\bm{c} \phi) = \bm{c} \cdot (\nabla \phi) となることに注意して下さい.

\bm{c} \cdot \left( \int \int \int \limits _{V} \nabla \phi dV - \int \int \limits _{S} \phi d\bm{S} \right) = 0       \tag{2}

ここで \bm{c} は任意のベクトルでしたので,括弧の部分 =0 が要請されて次式を得ます.これは 面積分と体積分 で考えた公式に他なりません.(面積分と体積分の記事中では,微分の方向を x_{1} と仮定していましたが,式 (3) はそれが \bm{n} 方向に一般化されています.)

\int \int \int \limits _{V} \nabla \phi dV = \int \int  \limits _{S} \bm{n} \phi dS   \tag{3}

右辺で \bm{n} \phi と,少し変な書き方をしましたが,これは狙いがあってのことなので後で説明します.

派生する定理2

次に \bm{A} があるベクトル関数 \bm{A'} と適当なベクトル \bm{c} を使って \bm{A}=\bm{A'} \times \bm{c} と表わせる場合を考えます.このとき,式 (1) は次式のように変形できます. {\rm div}(\bm{A'} \times \bm{c} ) = \bm{c} \cdot (\nabla \times \bm{A'}) となることと, (\bm{A'}\times \bm{c}) \cdot \bm{n}= \bm{c}\cdot (\bm{n} \times \bm{A'}) に注意して下さい.(よく分からない人は ベクトルの公式2 を参考にして下さい.)

\bm{c} \cdot \left( \int \int \int  \limits _{V} \nabla \times \bm{A'}  dV - \int \int \limits _{S} \bm{n} \times \bm{A'} dS \right) = 0       \tag{4}

ここでも \bm{c} は任意のベクトルでしたので,括弧の部分 =0 が要請されて次式を得ます.

\int \int \int \limits _{V} \nabla \times \bm{A'}  dV = \int \int  \limits _{S} \bm{n} \times \bm{A'} dS       \tag{5}

派生する定理3

ベクトル場 \bm{A} が,ある適当なベクトル \bm{c} とテンソル T を使って次のように表現できる場合を考えます.

A_{i} = T_{ij}c_{j}    \tag{6}

これを式 (1) に代入し,前の二つの定理と同様の議論を用いると, \bm{c} が任意のベクトルであることから次式を得ます.

\int \int \int  \limits _{V} \frac{\partial T_{ij}}{\partial x_{j}} dV = \int \int \limits _{S} T_{ij}n_{j} dS         \tag{7}

ここまで読んで,式 (3)(5)(7) が全て似たような形をしていることに気がつくと思います. \nabla の作用の仕方が, {\rm grad}{\rm rot} か,はたまた二階のテンソルの微分なのかという違いはありますが,全て次のような形をしています.(作用の仕方が分からないので, \nabla の右側は (\cdots) としておきます.作用の仕方は,ここに入る関数次第だということにしておきます.)

\int \int \int  \limits _{V} \nabla (\cdots) dV = \int \int \limits _{S} \bm{n}(\cdots) dS     \tag{8}
[*](3)(5)(7) が同じ形にまとめられるのは,もちろん偶然ではありません.これらが同じ公式であることは, 微分形式の理論 を勉強するとより包括的に理解できると思います.また,この記事の兄弟版とも言える ストークスの定理の応用 も併せてご覧下さい.