有限群 の部分群の組成列を考えるとき,隣り合う群の商群 が全て可換群になるとき, を 可解群 と呼ぶのでした.
可解群の定義だけは 組成列と単純群 で紹介していますが,その役割については何も触れませんでした.名前から察せられるように,方程式の可解性を考えるときに重要な概念なのです.この記事では,後でガロア理論で使うために必要な,可解群に関する定理を導いておきます.二つ定理を紹介しますが,二番目の方が特に重要です.
theorem
群 の正規部分群を とします. が可解群となるのは, および が可解群になる場合に限ります.
proof
式 の組成列を考えて, だと仮定します.すると の組成列として を考えることが出来ます.また,商群 の組成列は で与えられます.ここで 第三同型定理 を使うと が言えますので,結局 の組成列の要素である各 は, や の組成列でも全く共通だということが示されます.これより定理が成り立つの明らかです.■
次の記事, ガロア群と可解群 の定理の証明では,次の定理を活用します.
theorem
有限巡回群は可解群です.
proof
証明は数学的帰納法によります.巡回群が一般に可換群であることより,位数が までの有限巡回群は,正規部分群として しか含まないので,可解群になることは自明です.一般に,位数が までの巡回群が可解群になると仮定しましょう.このとき,位数 の有限巡回群 に対し,もし が素数ならば, の正規部分群は だけとなり,定理は自明です. が素数ではないとして, が素数 で割り切れるとすると, シローの定理 により, は位数 の部分群 を持ちます.特に は可換群ですから, は正規部分群で,このとき仮定より は可解群となり, も可換群になります.■
まだ,この段階では定理の使い方がピンと来ないと思いますが,ゆっくりゆっくり進んで行きましょう.