いろいろな干渉1

波のセクションでは,いろいろな干渉が扱われます.ニュートンリング,薄膜,etc.…. 「干渉はどうも苦手だなぁ」と思っている人,それぞれの現象を別のものだと思っていませんか. まずは,ヤングの干渉実験,固定端反射と自由端反射についてじっくりと学んでください.

ヤングの干渉実験については, ヤングの干渉実験1ヤングの干渉実験2 を, 固定端反射と自由端反射については, 反射の法則 を参照してください.

上述の内容について学習が終わっている人は,このセクションに進みましょう. 「いろいろな干渉1」では,回折格子による干渉と薄膜による干渉を,次の「 いろいろな干渉2 」では, くさび型空気層による干渉とニュートン・リングによる干渉を紹介します. それぞれについて,明線条件式や暗線条件式を求めます.

はじめに

干渉とは何か,ということは,ヤングの干渉実験のセクションで学びました. ヤングの干渉実験では, 光路 差が波長の整数倍のところで明線,光路差が波長の半整数倍のところで暗線になりました.

以下では,光が固定端反射をした後で干渉するものが出てきます. 1回固定端反射すると,そこで位相が \pi ずれます. すると,山と山が重なって明線になるはずのところが,位相が \pi ずれたことによって, 山と谷が重なって暗線になるのです. したがって,このときの明線条件式や暗線条件式は,ヤングの干渉実験の場合と逆になりますね. つまり,光路差が波長の半整数倍のところで明線,光路差が波長の整数倍のところで暗線ということになるのです. 2回固定端反射すると,位相はまた \pi ずれて元に戻りますから,明線条件式や暗線条件式はヤングの干渉実験の場合と同じになります.

より一般的に言えば,奇数回の固定端反射を含む干渉では,ヤングの干渉実験と逆の条件式, 偶数回の固定端反射を含む干渉では,ヤングの干渉実験と同じ条件式,ということですね.

回折格子による干渉

たくさんのスリットを一定間隔に並べたものを回折格子と呼びます.スリットの幅は,光の波長程度です.

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このたくさんのスリットを通過した光は,回折して進んでいきます.光は互いに干渉して,スクリーンに干渉縞を作ります. 回折格子からスクリーンまでの距離が,スリット間隔に比べて十分大きいので, それぞれのスリットを通過してスクリーンのある点に到達した光の道筋は,互いに平行であると見なすことができるのです. 下の図を見てみてください.

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実際は上の図よりもさらに,(スリット間隔に比べて)回折格子からスクリーンまでの距離が大きい(数メートル程度)ですから, 「スクリーンのある点に到達する光の道筋は,互いに平行であると見なせる」ということも納得できると思います.

(空気中での)波長 \lambda の単色光を当てた場合について考えます.スリット間隔を d とします. ここでは図の見やすさと分かりやすさを優先し,回折格子をものすごく大きく描いています.

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隣り合ったスリットを通過し, \theta 方向に回折した光の光路差は, d\sin \theta となることが分かりますね. 回折格子による干渉は反射を含んでいませんから,ここまでで条件式を書くことができます.

回折格子に垂直に入射して, \theta 方向に回折して進む光について, m を整数 (m=0, 1, 2, 3, \cdots) として,明線条件式は,

d\sin \theta =m\cdot \lambda

暗線条件式は,

d\sin \theta =\left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda

となります.

問1

単色光の代わりに,白色光を当てた場合,スクリーンに現れる干渉縞はどのようなものになるか.

問2

回折格子とスクリーンの間を,屈折率 n の物質で満たした場合,明線条件式と暗線条件式はそれぞれどのようになるか.

薄膜による干渉

屈折率 n ,厚さ d の薄膜を考えます.

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この薄膜に,斜めに入ってきた(空気中での)波長 \lambda の光が,どのような干渉をするか考えてみましょう.

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屈折の法則 を導く際に見たように,上の図で BCB'C' は,同じ時間かかって進む距離で, その距離には同じ数の波長を含んでいます.つまり,光路差(条件式)には影響しません. 従って,薄膜による干渉では,赤い線で示した部分が光路差となります.

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D では光が反射していることから,上の図のように補助線を引くことができ, 赤い線で示した光路差は,青い線で示した部分の長さに等しいことが分かります. 青い線の長さは 2d\cos \theta ですね.

ところで,この薄膜による干渉では,光が点 C と点 D のところで反射しています. 点 C での反射は,屈折率の小さな物質から大きな物質へ入射する際の反射で固定端反射, 点 D での反射は,屈折率の大きな物質から小さな物質へ入射する際の反射で自由端反射です [*] . 固定端反射の回数は1回ですね.

また,屈折率 n の薄膜中での光の波長 \lambda ' は,屈折の法則から,

\lambda '=\frac{\lambda}{n}

と求まります.よって, m を整数 (m=0, 1, 2, 3, \cdots) として,明線条件式は,

2d\cos \theta =\left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda '=\left(m+\frac{1}{2}\right)\frac{\lambda}{n}

暗線条件式は,

2d\cos \theta =m\cdot \lambda '=m\cdot \frac{\lambda}{n}

となります.

[*]どういう場合に自由端反射で,どういう場合に固定端反射かということについては,ここでは深入りしません.が,大雑把なイメージを紹介します.屈折率の小さい物質から大きい物質へ入る時は,やわらかいものから固いものへ入るような,反射点が固定されたイメージで,屈折率の大きい物質から小さい物質へ入る時は,固いものからやわらかいものへ入るような,反射点が固定されていない自由なイメージです.ここで用いた「固い」,「やわらかい」という表現は,非常にあいまいなものですので,もっと詳しく知りたいという人は,教科書や参考書など,別のものを参照してください.

身近な例

シャボン玉が光を浴びた時に色づいて見えたり,道路にこぼれたガソリンが色づいて見える現象は, この薄膜による干渉の例です.シャボン玉やガソリンの,表面で反射された光と,裏面で反射された光が 干渉しているのです.

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