講義などで初めてベクトル解析を習った時,“難しい”,“わけわからん”と思った経験がありませんか?実は私もその一人です.いまだに詳しくはわかりませんが,これまで私が悩んだ過程をここにご紹介して,もしご参考になればと思います.
ベクトル解析って,ベクトルを使って問題解いたりするのでしょうか?ベクトルなら高校の数学で習ったし,要するに大きさと,方向(向き)を持つ概念ですよね?矢印作図して足し算したり,引き算したり,大きさを実数倍したり,特に始点を原点
にすれば終点の座標 でベクトルを表せちゃいます.作図しなくても,そういう風に成分表示すれば足し算,引き算も簡単です.内積だってわかります.成分で書くと とすればいいのです.簡単,なはずです. たいした事ないですよ,きっと.実は明日ベクトル解析の初講義なんですが,予習なんてしないで寝ちゃおっと・・・.
わー,なんなんだこれは! わからん,全くわからん!だいたい三角関数の じゃあるまいし,なんで ベクトルやるのに3,4文字英単語( (グラジエント), (ダイバージェンス), (ローテーション))や,おまけに偏微分記号まで出てくるんでしょう!もちろん は私でもわかります,直角三角形の辺の比ですよね?(絵を書いてみればすぐわかります.)偏微分だって,他の変数(例えば で微分する場合,それ以外の など)を定数と見て,微分する事でしょ?それも知ってるんだがなあ.いずれにせよこれは家に帰ってよく復習しないと.電磁気学はこれ使うって言うし・・・.
ここであきらめたり,あせってもしょうがないのでまずゆっくり順番に考えてみました. " "はえーっと" (傾き)"の略ですか・・・.たしか先生が黒板に書いた式は
だったなー. う〜ん, ももちろん, がいかにも難しそう・・・.でも冷静に見ると,これは値が三つ組みになってるから,スカラー(ベクトルのように方向を持たないただの数値)関数 から3次元のベクトルを一つ作ったようですね(どんなベクトルかはまだわかりませんが).とりあえず,わかりやすくするために を省いて2次元で考えると
あれっ,こうやってみると, の変化に対する の変化率と, の変化に対する の変化率を 成分に持つベクトルのようですね.例えば を具体的に考えると
なら
( は定数扱いで になる)
( は定数扱いで になる)だから
となるわけですか・・・. 一体このベクトルは何者でしょうか? 今の場合,変数 の変化に対する の変化率を表記する時に, 方向に対する変化率は , 方向に対する変化率は ,ということなのですが,どちらか なら,片方だけ(数値1個)で表されるのでしょうけど,実際はそうとは限らないし, 方向と 方向じゃ違う方向の大きさですから, と足し算するわけにもいきません.もし なら,ほとんど 方向と考えていいけど, 方向も完全に無視はできないし,それぞれの方向の大きさに応じた合成方向・・・というわけですか.この数値の場合と,一般的な場合をグラフに書くと以下のようになりますね.
なるほど,それで 方向と 方向の変化率をそれぞれ 方向と 方向の成分としたベクトル
を考えれば,まとめて表記できるわけですね. 方向の変化率を
方向の変化率を
と,それぞれ自体ベクトルと考えると,
ですから, は の変化率と の変化率を方向も含めて合成した,一番変化率の高い(坂で言えば勾配のきつい)方向を向いてるベクトルなんですね.だから (勾配)というのか・・・.ふー,やっとわかった気がします.( を増やして3次元で考えても同じ事ですね)
勾配がきつい方向ということは,矢印を逆にすれば,ボールが転がり落ちてくる方向になります(下図).
(続き物なので ベクトル解析奮闘記2 , ベクトル解析奮闘記3 もお読みいただくと嬉しいです!)