積分変換

積分変換という手法の,超入門です.

積分変換

ある関数 f(t) を, g(\alpha) に変換することを考えます.変換の仕方なんて,いくらでもあるわけですが,特に次のように積分を利用するものを積分変換と呼びます.

g(\alpha )=\int _{a}^{b} f(t) K(\alpha, t)dt    \tag{1}

積分する前に,なんだか知らない関数 K(\alpha, t) を掛けるというのがポイントです.この K と呼びます.積分区間は,核によって適当に定められるのが普通です.

いくつかの例

例えば K(\alpha, t)=e^{i\alpha t} だと,フーリエ変換というものになります.

g(\alpha )=\int _{-\infty}^{\infty} f(t) e^{i\alpha t} dt    \tag{2}

もし K(\alpha, t)=e^{-\alpha t} だと,これも有名なラプラス変換というものになります.

g(\alpha )=\int _{0}^{\infty} f(t) e^{-\alpha t} dt    \tag{3}

電気信号などの理論に出てくるMellin変換というのは, K(\alpha, t)=t^{\alpha -1} の場合です.

g(\alpha )=\int _{0}^{\infty} f(t) t^{\alpha -1} dt    \tag{4}

積分変換の気持ち

核の種類によって,ものすごい種類の積分変換があって,専門家でない人は,自分に関係ないものを覚える必要はありません.

しかし,一般に積分変換を行うと,何が便利なのか,ということを理解しておくのは大事です.例えば,ラプラス変換は,大抵の理工系の大学で,いつかは習うものですが,ラプラス変換を行うと,微積分が,掛け算や割り算に変わってしまうのでした.微分方程式をラプラス変換しておいて,掛け算や割り算でそれを解き,ラプラス逆変換をしてやれば,魔法のように答えが出てしまうわけです.

ラプラス変換によって,微積分の世界から,一瞬,掛け算割り算の世界に移動し,計算を済ませてから,また元の世界に戻ってきたという感じです.

Joh-Integ.gif

私が小さい頃,もう題名は忘れてしまいましたが,「宇宙刑事なんとか」とかいうようなテレビ番組があり,そこでは悪者と戦うとき,何故か超空間にワープして戦っていました.その空間では,宇宙刑事のパワーが何倍にもなる,というナレーションが毎回入るのが印象的でした. [*] 積分変換というのは,宇宙刑事がしていたこととまさに同じです.自分が戦いやすい世界に敵をひきずり込んでおき,やっつけておいてから,また元の世界に戻るための,数学的ワープが積分変換です.

どんな世界に引きずり込みたいかは,使う人次第ですが,積分変換とは,一般に,そんなもんだと思っておいて下さい.

[*]その空間では,宇宙刑事のパワーではなくて,悪者の方のパワーが何倍にもなるのではないか,という御指摘を頂いております.そのテレビ番組の筋はよく覚えていませんが,悪者のパワーが増すような空間で戦うのは得策ではありません.みなさんは,自分が計算しやすい空間に敵を引きずり込むようにして下さい.