物理のかぎしっぽ

地磁気反転とカオス

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コンパスの針がいつも北を指すことから分かるように (本当は北極点からは少しずれていますが), 地球は南北に極がある大きな磁石と考えられます. コンパスの針の北はN極ですから,実際の北極はS極です. コンパスさえあればいつでも方角が分かるわかるわけですが, 実は地球の磁極は数十万年という時間間隔でときどき引っくり返ることがあります.

地磁気の反転は,地質年代の違う岩石の研究によって発見されました. 岩石のなかには地磁気をうけてその磁場の向きに磁化するものがあります. ところが,ある年代ではそれがまったく逆になっているのです. そういうわけで,地磁気は逆になっているときがあると,現在では考えられています.

地球は大きな棒磁石?

地球は磁気を持っていますが,そもそもこれがどうしてあるのかが疑問です. 地球のなかに大きな棒磁石があってそれが磁場を生んでいるという説もありましたが, 地球内部は高温であるため,もし棒磁石であったなら強磁性を失い,磁化は消えさってしまいます.

地表から3000kmくらい下にはコアと呼ばれる部分がありますが, これが熱対流することで磁場が生まれてる説が有力です. コアは高温で,鉄などの導体が融けて動いています.つまりある種の電流とみなせます.

電磁誘導の法則から,動く電荷(電流)は磁場をつくり, これが地磁気を構成しているというわけです. コアがまるで発電機のような役目をしているので, これをダイナモ理論といいます.

もしコアの流れが反転してしまうと当然磁場も, つまり地球の磁極も反転してしまいます. したがってコアの流れの影響によって, 地磁気が反転することが説明できそうです. では数十万年単位でコアの流れを反転させている原因は何なのでしょうか. なにかの原因はあるはずですが,いまの所ハッキリと見つかっていません. 原因の一つとして考えられているのが,熱対流におけるカオス的現象です.

熱対流のカオス

カオスというのはもともと, 数学での「複雑不規則にふるまう解」という概念だそうです. そしてこの自然界には,数学のカオスに相当する, 複雑で不規則な振る舞いが実際にあることが明らかになっています. 三つの天体の運動などは, 初期条件がすこし違うとまったく違った運動になることで有名です.

さて,水の流れにも乱流というものがあります. 水道の蛇口を流しっぱなしにしていると, 何もしていないのに蛇口から出てくる水が乱れたりしますよね. 流体力学ではこういった乱流がカオスになり得るそうです. 特に流体のなかに温度差があるとカオスが起きます.

地球コアの熱対流にも乱流が起こるので, 流れ(電流)がちょうど反転すると南極と北極の地磁気が反転します. というわけで地磁気反転は熱対流のカオス的振る舞いによって起きている, ということも言えます. さらには,プレートテクトニクス運動や化学的要因など いろいろあるので明確な解答はまだ得られていません.

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