類別とラグランジェの定理の応用を,正多面体群を使って考えてみます.最初は,正六面体群を考えます.
正六面体群 について見てみましょう.正六面体の各頂点に から までの名前をつけることにします.正六面体群の元 の中には,全ての頂点を置換する変換と,特定の頂点を不動に保つ変換とがあります.
特定の頂点を不動に保つ変換とは,その頂点を通る対角線の回りに正六面体を回転させる変換です.例えば,いま仮に を不動に保つ変換 を考えると, は常に を満たすということです.変換 は一つではありませんが, の集合は の部分群になることが示せます.
[*] | 頂点 を不動に保つ変換の集合 に属する二つの元 を考えるとき,これを連続的に作用させても頂点 はやはり動きません.すなわち, が言えて, 同士の積は閉じています.また の逆元は逆回転させることですが,これが の元であることは明らかでしょう.よって は群となり, の部分群だと言えます. |
さて, に属する変換には,恒等置換か, 回すか, 度回すか,の3種類しかありませんでしたので, が言えます.この を使って, を類別しましょう. を,頂点 を頂点 へ移す変換だとすると, は次のように類別できます.
従って, が分かります.
他の正多面体群も,同様の手法で位数を求められることを見ましょう.
頂点の数 | その頂点を不動に保つ変換の数 | 群の位数 | |
---|---|---|---|
正四面体 | 4 | 3 | 12 |
正六面体 | 8 | 3 | 24 |
正八面体 | 6 | 4 | 24 |
正十二面体 | 20 | 3 | 60 |
正二十面体 | 12 | 5 | 60 |
ある頂点に対し,その頂点を不動に保つ変換の数( )は,その頂点に集まる辺の数と同じです.正六面体に対しては,対称群と対応させることですぐに解く方法が簡単でしたが( 正六面体群 を参照),正二十面体のように複雑なものには,視覚的に対称群を対応させるのは困難でした.ここで紹介した,剰余類分解を使う方法ならば,正二十面体でも一つの頂点だけに着目すれば良いので,視覚的にも簡単に計算できます.表中の頂点の数が にあたります.
いろいろな見方があるもんですね!