正多面体群3

類別とラグランジェの定理の応用を,正多面体群を使って考えてみます.最初は,正六面体群を考えます.

正六面体群

正六面体群 P(6) について見てみましょう.正六面体の各頂点に A_{1} から A_{8} までの名前をつけることにします.正六面体群の元 p の中には,全ての頂点を置換する変換と,特定の頂点を不動に保つ変換とがあります.

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特定の頂点を不動に保つ変換とは,その頂点を通る対角線の回りに正六面体を回転させる変換です.例えば,いま仮に A_{1} を不動に保つ変換 g^{(1)} を考えると, g^{(1)} は常に g^{(1)}(A_{1})=A_{1} を満たすということです.変換 g^{(1)} は一つではありませんが, g^{(1)} の集合は P(6) の部分群になることが示せます.

[*]頂点 A_{1} を不動に保つ変換の集合 H に属する二つの元 {g^{(1)}}_{1},{g^{(1)}}_{2} を考えるとき,これを連続的に作用させても頂点 A_{1} はやはり動きません.すなわち, {g^{(1)}}_{1}{g^{(1)}}_{2} \in H が言えて, g^{(1)} 同士の積は閉じています.また {g^{(1)}}_{1} の逆元は逆回転させることですが,これが H の元であることは明らかでしょう.よって H は群となり, P(6) の部分群だと言えます.

さて, H に属する変換には,恒等置換か, 120 回すか, 240 度回すか,の3種類しかありませんでしたので, |H|=3 が言えます.この H を使って, P(6) を類別しましょう. a_{i} を,頂点 A_{1} を頂点 A_{i} へ移す変換だとすると, P(6) は次のように類別できます.

P(6)=H+a_{2}H+a_{3}H+a_{4}H+a_{5}H+a_{6}H+a_{7}H+a_{8}H

従って, |P(6)|=|H| \times |P(6):H|=3 \times 8 = 24 が分かります.

その他の正多面体群

他の正多面体群も,同様の手法で位数を求められることを見ましょう.

正多面体の頂点,辺,面
  頂点の数 その頂点を不動に保つ変換の数 群の位数
正四面体 4 3 12
正六面体 8 3 24
正八面体 6 4 24
正十二面体 20 3 60
正二十面体 12 5 60

ある頂点に対し,その頂点を不動に保つ変換の数( |H| )は,その頂点に集まる辺の数と同じです.正六面体に対しては,対称群と対応させることですぐに解く方法が簡単でしたが( 正六面体群 を参照),正二十面体のように複雑なものには,視覚的に対称群を対応させるのは困難でした.ここで紹介した,剰余類分解を使う方法ならば,正二十面体でも一つの頂点だけに着目すれば良いので,視覚的にも簡単に計算できます.表中の頂点の数が |P(i):H| にあたります.

Joh-polygons.gif

いろいろな見方があるもんですね!