与えられた多項式が既約であるかどうかを判断するのに便利な,アイゼンシュタインの定理と呼ばれる定理があります.
theorem
整数係数を持つ
上の多項式
に対しある素数
が存在し,
が係数
を割り,
を割らず,かつ
が
を割らないとき,
は既約であると言えます.
proof
仮に
が可約だとして背理法で示します.可約な多項式はガウスの補題( 因数分解の一意性 を参照)により,整数係数を持った多項式の積に分解できます.
.ここで
と置くと,
の係数は
と表わされます.仮定より,
は
を割るため,
は
か
を割りますが,
が
を割らないことより,
と
の両方を割ることはありません.ここで
は
を割り,
を割らないと決めても一般性を失いません.次に
ですが,先の結果より
は
を割りませんので
を割ることが要請されます.順番に
を見ていくと,
は
を全て割るという結果に至ります.これは
が主係数
を割らないとした仮定に反します.よって
は既約です.■
証明だけ追っても,定理の意味がピンと来ないと思います.定理自体は簡単ですので,以下の練習問題を解いてみれば,この定理が何を言っているのか,どういう風に使うのかが分かってくると思います.
アイゼンシュタイン(
)は幼少のときから常に病気がちで,家庭も貧しく,彼の5人の兄弟姉妹はみな成人する前に夭逝してしまいました.そのような事情もあってか塞ぎがちで難しい性格の人だったようです.しかし早くから学校では数学の才能を認められ,オイラーやラグランジェの著作を独学で学びました.その後ガウスの『整数論』(原題:
)に魅了され,ガウスの弟子となって数論の研究を続けました.しかし,常に持病に悩み,結局若くして死んでしまいました.そんなに有名な数学者ではありませんが,なんだかとても可哀想です.定理に名前が残っているのは幸いです.
