縦波と横波

波には縦波と横波の2種類があります.両者の違いを見ていきましょう.

波を伝えるもの

波を伝えるものを「媒質(ばいしつ)」と呼びます.いきなりそんなことを言われても分かりませんよね. スタジアムなど人がたくさん集まったときによくやる「ウェーブ」を例に取って説明します.

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ウェーブをやるとき,1人1人の動きは,「座った状態から立って,そして座る」というものですよね. 自分の隣の人が少し立ったら,自分が立ち始めるようなイメージです. そして,自分が少し立ったら,反対の隣の人が立ち始めるんですよね. この場合,ウェーブをやっているメンバー1人1人が波を伝える「媒質」です. ここで注意したいのは,メンバーはその場で立ったり座ったりしているだけなのに, 波(ウェーブ)は左から右へ伝わっていっているということです.

縦波と横波の違い

上で示したウェーブの例は,媒質である人の動き(上下)に対して,波の進む向き(左→右)が垂直になっています. このような波を「横波」と呼びます.では,下の例はどうでしょうか.

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横一列に並びます.1番左の人は波源となって波を送り,それ以外の人は順々に隣の人の真似をします. 波源である1番左の人は,隣の人にぶつかって元の位置に戻り,逆の方に少し行ってまた元に戻ります. この動きを繰り返すと,人が集まっている部分と,人があまりいない部分ができて, それが左から右へ動いていくことになります.これも波の一種で,上の例と同じように, 波を伝える「媒質」はメンバー1人1人です.(これはウェーブと違って,やることはまずないと思いますが.)

波は波でも,上の横波と違う点がありますね.媒質である人の動きと,波の進む向きが同じです. このような波を「縦波」と呼んでいます.また,媒質の密度が高くなっている部分(人が集まっている部分)のことを 「密(みつ)」,媒質の密度が小さくなっている部分(人があまりいない部分)のことを「疎(そ)」といいます. このことから,縦波は「疎密波」とも呼ばれます.

縦波を横波のように表す

横波の例を簡略的な図で示してみると,

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というようになります.視覚的に分かりやすいですよね.ところが,縦波の例を簡略的な図で表してみると,

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というようになって,横波よりは,媒質の動きを視覚的に捉えることが難しいと感じる人も多いでしょう. そこで,「縦波を横波のように表す」方法があります. 縦波で媒質が(ここの例では)横向きに動いているものを,横波と同じように上下に動いているものとして 表そうというわけです.

ここで1つ約束事をします.縦波において,媒質が元の位置より右に動いているものは, それと同じ距離だけ元の位置から上に動いているものとして表し,媒質が元の位置より左に動いているものは, それと同じ距離だけ元の位置から下に動いているものとして表します. 実際に図にしてみると以下のようになります.

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縦波をそのまま表した図よりも,視覚的に分かりやすいですね.

まとめ

縦波と横波の違いは,媒質の動きと波の進む方向の関係の違いでした. そして,媒質の動きと波の進む方向が同じである縦波は,媒質の動きをそのまま捉えたのでは, 視覚的に理解しづらいので,横波のように表示することがあるというわけです. 縦波については,そのまま表示したものと横波のように表示したものを,自在に書き換えられるように練習すると良いですよ.

参考

下の動画は,水族館の波の断面が見える場所で撮られたもので, 右から左へ進む波です.みなさんも,身近にあるいろいろな波を探してみてください.