波の式1

波動を学んでいると,「波の式」というものが登場します.振動の様子を,式で表してみようというものです. 任意の点 x の時刻 t における変位 y(x, t) を求めることが目標です. 以下では,変位 y[{\rm m}] や位置 x[{\rm m}] ,時刻 t[{\rm s}] ,周期 T[{\rm s}] ,波長 \lambda[{\rm m}] ,振幅 A[{\rm m}] など,波動を学ぶ上で基本的な要素が 出てきます.これらについて勉強が済んでいない人は,まず 波の大事な性質 から読んでみてください.

原点は単振動している

分かりやすいように,波源は原点にあるとします.そして,その波源は 単振動 しています. 原点での変位 y(0, t) はどのように表せるでしょうか.

ここでは周期を T としていますので, T[s] 経過した時に元の変位に戻っていなければなりません. 時刻 t=0 での変位を 0 とし,そこから単振動をスタートしたとすると,

y(0, t)=A\sin 2\pi \frac{t}{T} \tag{1}

となります. A は振幅です.時刻 t=0 からスタートして, T[s] 秒後の t=T のときに初めて,位相が 2\pi に戻りますね. つまり,変位が元に戻ってくるということです.ここで,位相が無次元になっていることも確認してください. (式(1)のより詳細な説明については, 単振動 を参照してください.)

原点の振動が伝わっていく

原点の振動が式(1)のように表されるとき,波はどのように伝わっていくのでしょうか. グラフに描いてみましょう.ひもの先を原点で振動させるようなイメージです. 波源から出た波は,等速で伝わっていきます.

  • t=0
tomo-sinwave-fig1.png
  • t=\frac{1}{4}T
tomo-sinwave-fig2.png
  • t=\frac{1}{2}T
tomo-sinwave-fig3.png
  • t=\frac{3}{4}T
tomo-sinwave-fig4.png
  • t=T
tomo-sinwave-fig5.png
  • t=\frac{5}{4}T
tomo-sinwave-fig6.png

このように伝わっていきますね.原点での振動がだんだんと伝わっていくことが分かります. 上に示したグラフは, y-x グラフです.つまり,グラフ1枚1枚は時刻 t を固定したものだということです. そして,時刻を追って動かすと,以下のようになります.

tomo-sinwave-fig8.gif

原点以外の点ではどのような振動になるか

では,原点以外の点ではどのような振動になるかをみていきましょう. 波は以下のように伝わっていくのでした.

tomo-sinwave-fig7.png

x にスポットを当てて考えてみます.今,点 x にいる波も, 元はといえば原点にいました.何秒か前の原点の振動が再現されているということもできますね. では,何秒前の原点の振動が再現されているのでしょうか. 波の伝わる速さを v としますと,原点から点 x に到達するまでに \frac{x}{v} という時間がかかっています( x>0 としています). つまり, \frac{x}{v} 秒前の原点での振動が,今,点 x で再現されているのです. 原点は(1)で表される振動をしているわけですから,点 x における変位を y(t, x) とすると,

y(t, x)=y\left(0, t-\frac{x}{v}\right)=A\sin 2\pi\frac{\left( t-\frac{x}{v} \right)}{T}

となることが分かります.少し書き換えてみますと,

\begin{array}{rl}y(t, x) &= \displaystyle A\sin \frac{2\pi}{T}\left(t-\frac{x}{v}\right) \\        &= \displaystyle A\sin 2\pi \left(\frac{t}{T}-\frac{x}{vT}\right) \\        &= \displaystyle A\sin 2\pi \left(\frac{t}{T}-\frac{x}{\lambda}\right) \tag{2}\\\end{array}

となります( \lambda は波長).今まで一生懸命この式を覚えていた!!っていう人,いませんか? えぇ〜っと・・・ T はどこだっけ・・・ \lambda はどこだっけ・・・分子?分母?なんて思い出そうとしていた人,いませんか? 導出はそれほど難しくありませんから,式を覚えるより考え方を身に付けてしまった方が良いですよ. また,はじめのセクションでも触れましたが,位相は無次元です.(2)式の括弧の中を見てみると, t[{\rm s}]T[{\rm s}] で 割ってありますし, x[{\rm m}]\lambda[{\rm m}] で割ってありますから,ちゃんと無次元になっています. そういったところを気をつけていると,つまらない間違えをふせげるかもしれません.