2006年2月13日,京都工芸繊維大学工芸学部電子情報工学科の教授でいらっしゃる久保田敏弘先生にご協力を願い,ホログラムの制作を行いました.その様子を記事にします.また,ホログラムやホログラフィ技術に関しましては, こちら をご参考になさってください.
ホログラフィには作成方法によっていくつか種類があります. 今回,制作したホログラムは最も簡単なもので,ヘリウムネオンレーザー(赤色,波長 )を光源として使用します.原理は ホログラフィ技術 で紹介したものと全く同じになります.
ホログラムの被写体は, 崎間氏 に制作していただいた「かぎしっぽネコ」と黒子の携帯ストラップです.
また,使用する光学系は以下のとおりです.
記録材料は銀塩乳剤(通常の写真乾板)です.
ホログラムを制作するということは,記録材料に あたりに何千本もの干渉縞を記録するということなので,制作する際にはいかなるゆらぎの原因も排除しておく必要があります.
また,現像処理前の記録材料は,もちろんそのまま蛍光灯の下にさらしてはいけません.そんなところで,感光されてはたまりません.なので・・・
[*] | 今回用いたのは空気圧を利用して定盤を浮かす空気ばね方式のものです. |
[†] | 今回は内側を黒く塗装した発泡スチロールで光学系を囲みました. |
他にも気を使うこととして,参照光と物体光の記録材料までの光路長をできるだけ同じにしておく,部屋は振動の少ない低い階の部屋にする,ホログラムを記録する部屋と現像処理する部屋は近くにする,現像時に使う薬品が人体に有害である場合には換気できるようにしておく・・・などがあります. あと,レーザーを使用しますが,絶対にレーザーの光を直接目に当てないこと!!(失明します.)
記録材料に干渉縞を記録するのは一瞬でした(記録材料にどのくらいの強度の光が当たるかを考えて計算したところ,約2秒でした). 今回用いた銀塩乳剤の写真乾板は,何にもカバーされていない丸裸の状態で使用したので,記録後は蛍光灯などに露光しないように注意を払わなければいけません.あとは現像 [‡] を行うだけです.
[‡] | 現像には「現像液」,「漂白液」,「水」を使用します.「現像液」に写真乾板をしばらく浸して黒くなったら,水によって丁寧に現像液を落とします.そして,漂白液に乾板を浸してやると,再び透明になり,少し曇ったガラス程度にまでもどってきます.あとは,再び丁寧に水で洗い流してやり,乾板を均等に乾かせば完成です.しかし,現像処理が済んでも,非常に強い光を当ててしまうと,また露光することがあるらしいです. |
いよいよ,お楽しみ!出来上がったホログラムの再生です. ホログラムの再生は記録を行った光学系をそのまま使用して行います.つまり,記録したときの配置をそのままに,乾板をセットしなおして,レーザーを乾板に照射します.
記録対象のネコと星をそのままの位置にしておいて,乾板をセットして同じ様にレーザーを照射したところ下のような粗い干渉縞が見えました.これは,記録対象からの物体光と,ホログラムの像を再生する光が干渉しているからで,その干渉縞が粗いということは精度の良いホログラムであるということです.
今度は記録対象を除いて,乾板には参照光だけを照射します.乾板を上下左右の位置から覗き込んだときの写真です.ネコとその後ろに置いてある星との位置関係にご注目ください.
乾板の右半分を黒い厚紙で隠して,正面から見てみると・・・
でも,左から覗き込んでみると・・・
なんと,乾板を半分隠しても全体像がちゃんと見えます.ホログラムは一点一点に像の全体が記録されているため,このような冗長的な記録が可能なのです.