ドップラー効果1 では,観測者が動いて音源が静止している場合を紹介しました. ドップラー効果2では,音源が動いて観測者が静止している場合,観測者と音源の両方が動く場合をみていきます. 以下では,音源が出す音の振動数を ,観測者が観測する音の振動数を , 音速を ,観測者が動く速さを ,音源が動く速さを とします.
救急車のサイレンの場合はどうでしょうか.
簡単のため,救急車がまっすぐ観測者に向かって走ってくるものとします.
救急車の出す音の伝わる様子が,下図のように表せることは納得できるでしょうか. 今度は音源の出した音の伝わり方が,同心円状になっていませんね. 音源が動いているために,円の中心がずれていくからです. 観測者が観測する音は実線と実線の間隔が狭くなっていることが分かります. つまり,波長 が元より短くなっているのです (観測者が観測する音の振動数は,音源が出す音の振動数より大きくなることが分かります).
音源は,速さ で伝わっていく音を,速さ で追いかけていますから, 音源にとって,音の速さは に見えるはずです.
波の重要な関係式を用いると,音源については,
観測者については,
と書くことができて,以上2式より,
と求まります. となっています.
救急車まっすぐ観測者から遠ざかっていくものとします.
今度は,音源が観測者から遠ざかっていきます. 観測者が観測する音は実線と実線の間隔が広くなっていることが分かります. つまり,波長 が元より長くなっているのです (観測者が観測する音の振動数は,音源が出す音の振動数より小さくなることが分かります).
音源は,速さ で後ろ伝わっていく音から,速さ で遠ざかっていますから, 音源にとって,後ろに伝わっていく音の速さは に見えるはずです.
波の重要な関係式を用いると,音源については,
観測者については,
と書くことができて,以上2式より,
と求まります. となっています.
では,音源と観測者が両方動いている場合はどうなるでしょうか.
たまに,オープンカーなんかで車の音楽が外に漏れていることがあります. そういった車の前後を走る場合などが例に挙げられます.まずは観測者が前を走る場合です.
波長 は元より短くなり,観測者にとって音速は , 音源にとって音速は に見えるはずです.
波の重要な関係式を用いると,音源については,
観測者については,
と書くことができて,以上2式より,
と求まります.
逆に,速さ で動く音源を,観測者が速さ で追いかける場合, 観測者が観測する振動数はいくつになるか.音源の出す音の振動数を ,音速を とする.
ここまで読んでみて,「結局は最後2つのどちらかに帰着する」ということに気付いた方も, いらっしゃるかもしれません.その通りですね. ドップラー効果1 で紹介した「踏み切りに近づく時」の結果は, 式(2)で としたものですし,「踏切から遠ざかる時」の結果は,式(1)で としたものになっています. また,この記事で紹介した「救急車が近づく時」や「救急車が遠ざかる時」の結果についても,同様に考えることができます. さらに言ってしまえば,式(1)と(2)の違いは,速度の向きの違いですから, 軸の取り方を変えれば同じものだと考えることもできますね.ここでは扱わなかった,音源と観測者が互いに近づく場合や,互いに遠ざかる場合についても,考えてみると良いでしょう.
教科書や参考書では,式(1)や(2)が「ドップラー効果の公式」として書かれているものもあるようです. ここでは簡単のため,それをいくつかのパターンに分けて説明してきたというわけです. 公式を覚えて使えるようにするのも1つの勉強方法ですが,ここで紹介してきたように,その導き方まで理解しておけば,恐いものなしですよ.