微分演算子の演算( )を,テンソル記号を用いて表わすと次のようになります.添字は 等とし,同じ添字が二回出てきた場合(二乗を含む)は,縮約によってその添字の総和を取るものとします.
式 は計算の基本になりますから,自分でスラスラ書けないと困ります.各式の左辺の意味がわかっていれば,テンソル記号表記の右辺を導くのは簡単だと思います.また,クロネッカーのデルタやレヴィ・チヴィタ記号の公式も必要になりますので,ここに紹介しておきます.
[*] | この記事の内容と基本的に同じもので,より 本格的に解説した資料 を,愛媛大学元教授・矢野忠先生から御寄稿頂きましたので,ぜひ併せてご覧下さい.矢野先生,どうもありがとうございました. |
例題として, よくある間違い で使った次の公式を導いてみましょう.
まず左辺をテンソル記号で表記します.ベクトル の第 成分をテンソルでまず と書くところから始めましょう.添字は巡回的に の順だとします.頑張って,もう一度 を作用させ, の第 成分を表わします.添字は巡回的に の順だとします.
すでに頭がこんがらがっている人がいるかも知れませんが,式 を使っただけです.添字が混ざらないようにすることだけに注意して下さい.以下,一行ごとにコメントと式変形を交互に書いていきます.まず を外に出します.
式 が使えるように, を にします. は偶置換なので符号は変わりません.
式 を使います.
クロネッカーのデルタの作用を考えますが,出来る限り を消して に統一する方向で整理します.
式 より第一項目は ,式 より第二項は と書き直すことができます.公式が証明できました.