今までにも何度も強調してきたことですが,テンソルの成分は座標系(基底)の取り方に応じて変わります.しかし,成分が好き勝手に変わるわけではなく,成分の変わり方は座標系の変わり方を何らかの形で反映するものです.何か成分の変わり方に一定の法則があるとすれば,テンソルの成分を組み合わせることで座標系によらない量が作れるかも知れません.
例えばスカラー(零階のテンソル)は常に座標不変量でした.ベクトル(一階のテンソル)の内積も座標不変量でした.二階以上のテンソルにも,このような不変量があるのでしょうか.
二階のテンソルの不変量は,固有値の固有方程式を考えれば分かります.
固有値 はスカラーなので座標変換に対して不変です.式 が の形に変形できることを考えれば,式 の係数もそれぞれ座標不変量だということが分かるでしょう.
これら が二階のテンソル の座標不変量になります.実は,この つが最も基本的な座標不変量で,二階のテンソルに関する他の座標不変量は,全て を組み合わせて作ったものになります.