スカラー関数の線積分

この記事では,線積分という積分を勉強します.次の記事以降ではベクトルの線積分を考えますが,まず線積分という計算になれるためにスカラーを線積分するところから始めようと思います.解析学的な立場で厳密に考えることはしません.あくまで,直観的なイメージ重視でいきます.

線積分

高校で最初に積分を習ったとき,次図のようなイメージを使った人が多いかと思います.

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変数 x の各点で定義される関数 f(x) の値に \Delta x を掛け,この微小面積を x の全範囲に渡って足し合わせた量を考えます.図では,短冊状の長方形領域が幾つか描かれていますが,この幅を極限まで狭くし,かわりに無限に多くの短冊状領域を考えた極値的が \int_{x_{1}}^{x^{2}} f(x)dx という量になります.動的なイメージとしては,この積分は変数 xx 軸という 直線の上x_{1} から x_{2} まで動くとき,時々刻々 f(x) の値を足していった総和が積分だと考えても良いでしょう.ここまでは,高校数学の復習です.

さて,二変数関数 f(x,y) を積分するときも要点は全く同じで,各点 (x,y) で定義される関数 f(x,y) の値を全範囲に渡って足し合わせることを考えますが,『 xy がどう動くか』という点について,もう少しよく考えないといけません.一変数の場合は変数の動き方は一次元的で, 積分区間 と呼べるものでしたが,二変数の場合,変数 x,yxy 平面上でどのような領域を動くのかを考えないといけません.積分領域は xy 平面上で何か平面図形になるでしょう.例えば,次図は積分領域が長方形の場合のイメージ図です.各点 (x,y) で定義される関数 f(x,y) の値に \Delta x \Delta y を掛けた四角柱の 体積 を,全体に渡って足し合わせるイメージです.|064cb6fda6922748c28e702d89c98984| , \Delta y \rightarrow 0 の極限を取り,その代わりに無限に多くの四角柱を考えることにすれば,積分 \int \int f(x,y)dxdy を得ます.

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今のような話は,重積分を勉強したことがある人は知っていると思います.また,積分領域が曲線である積分を 線積分 と呼びます.線積分は,最初の短冊型領域の面積を足していくイメージで考えれば良いですが,短冊型領域を考えるのは直線上ではなく曲線上になります.

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曲線を C ,関数を f(x,y) として,線積分は次のように表わされます. ds を曲線の微小な弧の長さとすると, f(x,y)ds が微小短冊型領域の面積になります.( ds については 空間曲線と接線の方程式 を参照してください.)

\intop \limits_{C} f(x,y) ds   \tag{1}

もし, C が空間曲線なら三変数で次のようになります.

\intop \limits_{C} f(x,y,z) ds         \tag{2}
[*]四次元以上の線積分を考えることはあまりありませんが,同じように変数を増やすことで何次元にでも拡張できます.

弧長パラメーター ds に関して,デカルト座標系なら ds = \sqrt{dx^2 + dy^2 + dz^2} と書けて,ベクトル表示で d\bm{s}= \bm{e_{x}}dx+\bm{e_{y}}dy+\bm{e_{z}}dz のように表わすことも可能です.普通は d\bm{s} とか書かずに d\bm{r} と書きます.線積分をベクトル表示にすれば,以下のようになります.

\intop \limits_{C} f(x,y,z) d\bm{r} = \bm{e_{x}}\intop \limits_{C} f(x,y,z) dx + \bm{e_{y}}\intop \limits_{C} f(x,y,z) dy + \bm{e_{z}}\intop \limits_{C} f(x,y,z) dz   \tag{3}

線積分の計算

実際に線積分を計算するときには,積分経路となる曲線の方程式が必要です.例えば,曲線が f(x,y,z)=0 の形で与えられるとき,この曲線に沿って x,y,z がどう動くのかを記述するのはかなり面倒です(方程式 f(x,y,z)=0 を解くのと同じ手間がかかります.).もし,曲線がパラメーター表示できるなら,『曲線上を点 M_{1} から M_{2} まで動く』という条件を『パラメーター t0 から 1 まで動く』のように言い換えることができ,実質的に一変数の積分にまで問題を簡単化することが出来ます.パラメーター表示がお薦めです.

\bm{e_{x}}\intop \limits_{C} f(x,y,z) dx + \bm{e_{y}}\intop \limits_{C} f(x,y,z) dy + \bm{e_{z}}\intop \limits_{C} f(x,y,z) dz= \bm{e_{x}}\intop \limits_{C} f(x,y,z) \frac{dx}{dt}dt + \bm{e_{y}}\intop \limits_{C} f(x,y,z) \frac{dy}{dt}dt + \bm{e_{z}}\intop \limits_{C} f(x,y,z) \frac{dz}{dt}dt  \tag{4}

練習問題1

曲線 C: \ (x,y,z)=(a\cos t,a\sin t, bt) に沿って,関数 f(x,y,z)=x^2 + 2y +z の線積分 \intop \limits _{C} f(x,y,z)ds を求めて下さい. t0 から \pi まで動くものとします.

ヒント:まず, ft だけで表わしましょう.そして \frac{ds}{dt}dt を求めましょう. ds=\sqrt{dx^2 + dy^2 + dz^2} を使ってください.

練習問題2

曲線 C: \ (x,y,z)=(t,t^{2},t^{3}) \ (0 \le t \le 1) に沿って,関数 f(x,y,z)=xyz の線積分 \int \limits _{C} f(x,y,z)d\bm{r} を求めて下さい.

ヒント:まず, ft だけで表わしましょう.成分毎に \frac{dx}{dt}dt , \frac{dy}{dt}dt , \frac{dz}{dt}dt を求めてください.