勾配( )を積分の形で定義することができましたが( 参考 ),同じようにして,領域 の任意の点における発散( )を次のように積分形で定義することができます.
ガウスの法則を使えば,式 を示すのは簡単です.ただし, の各成分の一次導関数は 内で連続とします.
大事なことは,勾配と同じく,式 の右辺が座標系の取り方には無関係な形になっているため, 発散は座標系の取り方によらない と言えることです.( はベクトルの内積の形になっていますが,ベクトルの内積はスカラーとなり,座標系によらないのでした.詳しくは 一般の座標系における内積と外積 を参照して下さい.)
Important
発散( )は座標系の取り方によらない.
勾配,発散と来れば,次は回転( )ですが,案の定,回転も積分形で表現することが出来ます^^ この形に導くまでの議論は,勾配や発散の場合と全く同じですので,ここではもう省略します.
この式の右辺をよく見てみましょう. は軸性ベクトルで,座標系の取り方を右手系⇔左手系のように入れ替えるとき符号が変わる量です.しかし,左辺の も同じ軸性ベクトルなので,両辺で符号はいつも一緒で,右手系か左手系かを気にする必要はありません.そして,両辺ともに成分に関係のないベクトル表記になっていますから,等号は座標系の取り方によらずに成り立つものです.回転も,座標系の取り方によらないということが言えます.
Important
回転( )も座標系の取り方によらない.
もちろん,これは,ひとまず という形で定式化しておけば,後でどんな座標系に適用しても良いという意味であって,個々の成分の表現は座標系によります.( ベクトルの関数 , 積分定理のまとめと展望 等の註を参照して下さい.)
勾配,発散,回転の定義は,いずれも座標系によらないことが確認されました.(もちろん成分を見てみようと思えば,その表現は座標系によります.しかし,これらの演算子の作用そのものは座標系によらないということです.)この記事の 式,および gradの積分形による定義 の式 をまとめて,ちょっと変な書き方ですが, を次のように書くことが出来るでしょう.
式中, は『右から何か関数が掛かってくるよ』という意味とし, は の法線ベクトルだとします.こんな形で書いたからって,何か嬉しいことがあるわけではありませんが, 勾配,発散,回転はまとめて一つに書けるほど似ていること, いずれも座標系と無関係に定義されている演算子であること,の二点を頭の片隅に留めておいて下さい.いずれ微分形式の理論を勉強すると,これらの意味がよく分かってきます.
[*] | 勾配,発散,回転の定義が座標系と無関係だという点は,積分形表示によらなくても示し方は色々あると思います.この記事は一つの例に過ぎません. |