スカラー場 に対し,空間のある点(
とします )において,勾配ベクトルと呼ばれる量
を定義しました.意味がよく分からない人は スカラー場と勾配 をもう一度復習してください.勾配ベクトルはベクトルの形で表わされていますが,特定の方向への勾配ならば,その方向へ勾配ベクトルを射影することで,スカラーで表わすことができます.いま,点
において,ある方向(
どの向きでも良い)を決めるとき,その方向に沿った勾配を表わす方法を考えてみます.
から少し離れた点を
とし,
と置きます.この方向を考えます.
このとき,スカラー場 の点
における
方向の勾配は,微分の定義より次のように与えられるでしょう.二点間の距離を
とします.(
のとき
となります.)
このように,スカラー場の一点における,特定の方向に関する変化率を 方向微分 と呼び, を φのl方向の方向微係数 と呼びます.式
に出てくる
は,
を微小な量だとすると,偏微分を使って次のように表わせるでしょう.
式中, などの括弧中は『
と
のなす角』の意味とします.また
は『
の二次以上の項』という意味とします.式
に式
を代入して,次式のように式を展開できます.
方向微係数はずいぶん簡単な式で表わすことが出来ました.ここで ですが,これは内積の公式
を使えばすぐに示せますので,引っかかる人は自分で確認してみて下さい.
theorem
スカラー場 の点
における
方向への方向微係数は
で与えられます.
内積の意味を思い出し,『ベクトル の,
への射影』と考えれば,この結果はむしろ当然で,最初からいきなり書き下しても良さそうなものですが,少し丁寧に導いてみました.
[*] | 勾配ベクトルは座標基底 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |