皆さんは,極座標つまり と の変換行列(ヤコビアン)を見て [*] ,
[*] | ですね. |
であることに戸惑った経験はありませんか?
そういうことができるのは,どんな時なのかということについて調べてみました.
の微分形式を考えてみます.
そして逆変換は,
ですね.確かに,
と逆関数の微分法は成り立っていないようです.
ここで,一般的な場合に拡張して関係を調べてみましょう.変数同士の変換行列のランクを落とさないと仮定して, 二対二組 の変数間の変換を考えます.
という関係が成立していたとすると,仮定より, 上式の行列は逆を持ちます.すると,
となります.ここで記号 はこれでヤコビアン を定義するという意味です.
これと,
と比較します.すると,
という関係が成立します.
さて,得られた結果の検証をしてみましょう. とすると,
まず,式 より,
となります.はたして,等式は成り立つのでしょうか?式 の右辺は,
見事,成り立ちましたね.変数の数を増やし一般化してまとめておくと,
Important
N変数 からN変数 への変換はランク落ちしない限り,変換行列の逆行列を考えることによって, 逆変換が得られる.なお,この時には一般に は成立しない.
では,熱力学でよく使われる変数の微分形はどうなのでしょう?
なじみがあると思われる式から始めましょう.
この式は,一変数 に対し,二変数 の関数となっています.
熱力学では,等温過程,等圧過程,定積過程,断熱過程など様々な経路を指定して, その種々の量を計算するのでした.つまり,それは二変数の自由度を持っていた関数形に, 例えば,エントロピー の任意の関数 を用いて,
などの変化方向に制限をつけることになります.すると,なんと,
より,
となり,お馴染みのインバース(逆数)の関係が出てきました.
もう一言付け足すとすれば,等積過程 の場合, であり,
となります.これはお馴染みの関係ではないでしょうか? これもまたまとめておきます.
Important
熱力学的関係式に於いて,ピストンの変化軌道を決定したら,1変数 から1変数 への変換となる.その変換が ランク落ちしない限り,変換の同じ過程(制限)の逆を考えることによって, 逆変換が得られる.なお, この時には は成立する.
今考えている変換が,一変数対一変数の時のみ逆数の関係が成立し, 多変数同士の変換では,変換行列の逆行列が正しい逆を与えるということのようです. 今日はこの辺で,お疲れ様でした.