ボイル-シャルルの法則の導出

ここでは,ボイルの法則とシャルルの法則からボイル-シャルルの法則を導く方法を,具体的に説明し たいと思います.

大まかな方法

最初に,導出方法をおおまかにお話します.次の図をご覧ください.

tomi-boylecharle-fig2.png

ボイル-シャルルの法則を導く際,図中の三状態, A,B,C間の移動を考えます.つまり,まず 圧力を一定に保ったまま AからBへ移動 し,次に 温度を一定に保ったまま BからCへ移動する,という手法をとるのです.勘の良い方ならもうお分かりですね! 気体の三法則 の中でお話ししたように,「圧力を一定に保った時」成立するのは シャルルの法則 ,「温度を一定に保った時」成立す るのは ボイルの法則 です.ということは,これらの法則を順に適用していけば,ボイル-シャルルの法則を導くことができるわけです!

シャルルの法則の適用

では実際に導出していきましょう.上図の状態Aの時の気体の体積と温度をそれぞれ V_{A},T_{A} ,状態Bの時の気体の体積と温度をそれ ぞれ V_{B},T_{B} とします.ここで T_{i}(i=A,B)絶対温度 です.気体の状態が圧力を一定に保ったままAからBに移動するので, シャルルの法則より

\frac{V_{A}}{T_{A}}=\frac{V_{B}}{T_{B}}

すなわち

V_{B}=V_{A}\frac{T_{B}}{T_{A}} \tag{1}

が成り立ちます.

ボイルの法則の適用

次に,状態Bの時の気体の圧力を P_{B} ,状態Cの時の気体の圧力と体積をそれぞれ P_{C},V_{C} とします.気体の温度を一定に保っ たままBからCに移動するので,ボイルの法則より

P_{B}V_{B}=P_{C}V_{C} \tag{2}

が成り立ちます.

ボイル-シャルルの法則へ

いよいよボイル-シャルルの法則を導出します.式(1)を式(2)に代入してみましょう.すると,

P_{B}V_{A}\frac{T_{B}}{T_{A}}=P_{C}V_{C}

となります.これを整理すると,

\frac{P_{B}V_{A}}{T_{A}}=\frac{P_{C}V_{C}}{T_{B}} \tag{3}

となります.状態AからBへの移動では,圧力が一定なので P_{A}=P_{B} ,状態BからCへの移動では,温度が一定なので T_{B}=T_{C} です.これらを式(3)に代入すると,

\frac{P_{A}V_{A}}{T_{A}}=\frac{P_{C}V_{C}}{T_{C}} \tag{4}

が得られます.状態Aも状態Cも共に状態のある一点なので, P_{i},V_{i},T_{i}(i=A,C) はそれぞれ,ある特定の値であることがお分か りいただけると思います.ゆえに式(4)は

\frac{P_{A}V_{A}}{T_{A}}=\frac{P_{C}V_{C}}{T_{C}}=Const. \tag{5}

となります.(ここで Const. とは定数(constant)を表します).この定数を R とおくと [*] 式(5)は

\frac{P_{A}V_{A}}{T_{A}}=\frac{P_{C}V_{C}}{T_{C}}=Const.=R \tag{6}

となり,式(6)は任意の状態の圧力 P ,体積 V ,(絶対)温度 T について

\frac{PV}{T}=Const.=R \tag{7}

が成り立っていることを表します.式(7)より,

PV=RT \tag{8}

とすることができます.式(8)は,ボイル-シャルルの法則,そのものですね!これで無事,導出が完了したことがわか ります.

[*]この R は, 気体定数 と呼ばれるものです.気体定数の値を定める時,扱う気体の量は 1モル であることが決まっています.詳しくは,関連記事 気体定数 をご覧ください.