真性・外因性半導体(上級編)

導入編,中級編では真性半導体,N形P形半導体の違いについて説明してきましたが,ここではそれらを特徴付ける最も重要なパラメータである「フェルミ準位」について説明します.

まずは金属の話から

一度,半導体からはなれて,金属の話をすることにしましょう. 導体・絶縁体・半導体 で見たとおり,金属では,あるバンドの中心付近で,電子の詰まった領域と,電子のからの領域が別れているのでしたよね?

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しかし,ある有限の温度(例えば300K,室温)では,実際はきれいに二つの領域に別れているのではなく,グラデーションがかかったように,徐々に電子の密度が変わります.この,グラデーションの部分を拡大してみてみると・・・

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こんな感じの図になります.これをグラフにあらわしたのが右側の図です [*] .こんな感じにグラデーションがかかっていることを,覚えて置いてください.

ここで, E_F という重要なパラメータが出てきます. E_F は, フェルミ準位(フェルミレベル,フェルミエネルギー) と呼ばれるもので, 「ちょうど電子が半分だけ詰まったところでのエネルギー」 を指します. ちなみに,絶対零度( 0K )においては,このグラフは( E<E_F )の領域では 1 ,( E>E_F )の領域では 0 のステップ関数のようなグラフになります.(下の図)

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つまり,フェルミ準位 E_F は,大雑把に言えば「電子がどこまで詰まっているかを示すエネルギー」と言うことになります. このフェルミ準位がエネルギー帯の中にあれば,その物質は金属となり,フェルミ準位が禁制帯の中にあれば,その物質は絶縁体や半導体となります.

[*]この関数のことを, フェルミディラック分布関数 といいます.詳しくは,またの機会に勉強することにしましょう.

真性半導体

では,半導体の場合のバンド構造と電子の分布も見てみることにしましょう.

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金属の場合と同様に,拡大してグラフと一緒に書くと,次の図のようになります.

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ここで,注目すべきところは,赤く丸印をつけた箇所. ここでグラフが完全に 0,1 となっていないため,少しだけキャリアが存在することになります.

ここで,フェルミ準位 E_F は,バンドギャップのほぼ中心に位置します. このため,電子と正孔の数は等しくなります.

これは中級編で見たように,熱により価電子帯から伝導体へ励起されたキャリアが存在することを示します.

外因性半導体

真性半導体に対して,格子欠陥や不純物が存在するために電子あるいは正孔のどちらかが多くなっている半導体を外因性半導体といいます.外因性半導体には,n形半導体とp形半導体の2種類あります.どちらも真性半導体に不純物原子を添加して作ります.(初級編,中級編で見ましたよね?)

では,これら外因性半導体のバンド構造と電子の分布を見てみることにしましょう.

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N形半導体では,フェルミ準位 E_F がバンドギャップの中心より上側に存在します. このため,図の赤丸で示したように,伝導体に多数の電子が存在します.

ここで注目すべき点は,青丸で示したところです.ここでもここでグラフが完全に 1 になっていないため,価電子帯に正孔が存在することがわかります. この正孔の数は電子に比べて非常に少ないため,N形半導体中の正孔を 少数キャリア と呼び,逆に電子を 多数キャリア と呼びます.(中級編でやりましたね.)

一方,P形半導体では,フェルミ準位 E_F がバンドギャップの中心より下側に存在します. このため,N形半導体のときとは逆に,価電子帯に多数の正孔が存在し,伝導体に少数の電子が存在します.

このため,P形半導体中の正孔を 多数キャリア と呼び,逆に電子を 少数キャリア と呼びます.

まとめ

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この図のように,真性半導体,N形半導体,P形半導体,それぞれに対してフェルミ準位 E_F の位置がバンドギャップ内で変化することを説明してきました.

この記事を読んで,それぞれの種類の半導体と,そのフェルミ準位との関係を理解できたら,OKです!