ヤングの干渉実験1

イギリスの物理学者ヤングは,1800年代初め,光の干渉の性質を示す下のような実験をしました. これは,光が波としての性質を持つことを示す現象の一つです.

ヤングの干渉実験の装置

単スリット( {\rm S} )と複スリット( {\rm S_1}, {\rm S_2} ), それにスクリーンを使って,以下のような装置を作り,波長( \lambda )の 決まった光(単色光)を通しました.

tomo-young-fig1.png

ここで, {\rm S_1O}={\rm S_2O}, {\rm S_1S_2}\ll {\rm OO'} です. スリット幅 {\rm S_1S_2} は光の波長程度です.

1つ目のスリット(単スリット)

1つ目のスリット {\rm S} を通すことにより,光は以下の図のように進んでいきます (図に示した同心円は,波の山(または谷)と考えることができます).

tomo-young-fig2.png

2つ目のスリット(複スリット)

すると, {\rm S_1}, {\rm S_2} には同位相の光が入ってくることになります. そして,同位相のまま,スリット {\rm S_1}, {\rm S_2} を抜けていきます.

tomo-young-fig3.png

つまり, {\rm S_1} から波の山が出たときは {\rm S_2} からも波の山が, {\rm S_1} から波の谷が出たときは {\rm S_2} からも波の谷が出るということです.

スクリーンに映し出される光の模様を予想

さて,スクリーンに届いた光は,どのような模様を作るでしょうか.ここで予想してみましょう.

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スクリーンでは, {\rm S_1} から出てきた光と, {\rm S_2} から出てきた光が 重なることになります. {\rm S_1} から出てきた光の山と, {\rm S_2} から出てきた 光の山が重なると,そこは明るくなります. {\rm S_1} から出てきた光の谷と, {\rm S_2} から出てきた光の谷が重なった場合も同様に明るくなります. 逆に, {\rm S_1} から出てきた光の山と, {\rm S_2} から出てきた光の谷が重なった場合, 両者は打ち消しあって暗くなります. {\rm S_1} から出てきた光の谷と, {\rm S_2} から 出てきた光の山が重なった場合も同様に暗くなります.

ということは,スクリーン上のどこで, (a){\rm S_1} からの光の山と {\rm S_2} からの光の山が重なる」, (b){\rm S_1} からの光の谷と {\rm S_2} からの光の谷が 重なる」, (c){\rm S_1} からの光の山と {\rm S_2} からの光の谷が重なる」, (d){\rm S_1} からの光の谷と {\rm S_2} からの光の山が重なる」ということが 起きるのかを調べればよいですね.

スクリーンに映し出される光の模様

まず,点 O' について考えてみましょう.距離 {\rm S_1O'} と距離 {\rm S_2O'} は 等しいので,光は同じ距離だけ進んできています.つまり, {\rm S_1} から出た光の山が {\rm O'} に 到達したとき, {\rm S_2} から出た光も, {\rm O'} に山が到達している ことになります.ということは,上述の予想から,点 {\rm O} は明るくなることが分かります.

では,今度はスクリーン上の任意の点 {\rm P} について考えてみましょう. {\rm S_1} から 出た光と, {\rm S_2} から出た光は,それぞれ距離 {\rm S_1P} と距離 {\rm S_2P} だけ 進んできています.

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|{\rm S_1P}-{\rm S_2P}|=1\cdot\lambda
|{\rm S_1P}-{\rm S_2P}|=2\cdot\lambda
|{\rm S_1P}-{\rm S_2P}|=3\cdot\lambda
\cdots

となっている点では,上述の (a)(b) の場合に相当することが分かります (つまり明るくなります). {\rm S_1P}{\rm S_2P} の差が,波長の整数倍に なっていますから,一方の光が波の山のときにはもう一方の光も波の山,一方の光が 波の谷のときにはもう一方の光も波の谷が到達しているということです. 最初に考えた点 {\rm O} での場合は,

|S_1O'-S_2O'|=0\cdot\lambda

と書くことができますね.また,

|{\rm S_1P}-{\rm S_2P}|=\left(0+\frac{1}{2}\right)\lambda
|{\rm S_1P}-{\rm S_2P}|=\left(1+\frac{1}{2}\right)\lambda
|{\rm S_1P}-{\rm S_2P}|=\left(2+\frac{1}{2}\right)\lambda
\cdots

となっている点では,上述の (c)(d) の場合に相当することが分かります (つまり暗くなります). {\rm S_1P}{\rm S_2P} の差が,波長の半整数倍に なっていますから,一方の光が波の山のときにはもう一方の光は波の谷が到達していると いうことです.

ここで出てきた |{\rm S_1P}-{\rm S_2P}| のことを,2つの光の「行路差」と呼びます.

以上をまとめると,以下のようになります.

明るくなるところ

m を整数 (m=0, 1, 2, 3, \cdots) として,

|{\rm S_1P}-{\rm S_2P}|=m\cdot\lambda \tag{1}

と書けるとき,点 {\rm P} は明るくなります.これを「明線」と呼び,式 (1) を 「明線条件式」といいます.

暗くなるところ

m を整数 (m=0, 1, 2, 3, \cdots) として,

|{\rm S_1P}-{\rm S_2P}|=\left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda \tag{2}

と書けるとき,点 {\rm P} は暗くなります.これを「暗線」と呼び,式 (2) を 「暗線条件式」といいます.

まとめ

結果として,スクリーンには {\rm O'} 中心に上下対象の縞模様(明線と暗線の繰り返し)が できることになります.以下の図は,スクリーンに映し出される縞模様を模式的に描いたものです.

tomo-young-fig6.png