説明できない現象

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19世紀末,ニュートンの古典力学,マクスウェルの方程式による電磁気学により, 物理学はほぼ完成したと思われていました. 人間の周りの現象はほぼすべて説明されつくし,天体の運航も予想できていました. もう基本法則はすべて分かり,あとはそれらをより詳細に応用することで,どんなことでも分かるのだと思われていました. あ,古典力学といったのは現在の量子力学と相対論誕生以後の力学と比べてのことです.

また,X線や陰極線の実験技術も進歩し,人間がみることの出来る世界はより小さなものへ広がっていきました. しかしどんなに小さな世界でも,ただ単に小さいというだけでこれまでの基本法則は変わらず, ニュートンやマクスウェルの式をそのまま使えるのだと信じられていました.

実際そのような方法で,小さな世界の運動から統計的手法をとることによって, 人間の目で見,肌で感じられるような世界の性質を説明できることをマクスウェルやボルツマンが示しました. もう,人間の叡知は最高にまで達したと物理学者は思ったのではないでしょうか (僕がこの時代の物理学者だったらきっとそう思う).

でもまあよくあることで,そうは問屋がおろさない. 世界は予想以上に不思議で,さっぱり説明できない現象がありました. 代表的なのはつぎの3つです.

空洞輻射というのは熱せられた物体がどんな色で光るのか,ということです. そしてこの光り方はそれまでの基本法則で予測可能なハズだったのですが,どうしても実験事実と合わないのです. この問題が量子力学の幕開けでした.

ガスに高電圧をかけて発光させてやると,ガスから規則的なスペクトルが観測されます. それは元素の種類によって異なり,ある元素ではある波長の光しか観測されないことが分かっていました. 水素原子のスペクトルは数式で表すことに成功しましたが,データから算出された式で,なぜその式になるのかは謎でした. この問題は電子の波動性につながっています.

金属の表面に光を当てると電子が飛び出してくるという現象が光電効果です. 不思議なことに,どんなに強い光でも赤い(振動数が小さい)光では電子が飛び出さず, 逆にどんなに弱い光でも紫の(振動数が大きい)光では電子は飛び出してくるのです.この理由も謎でした. この問題は光の粒子性につながります.

完成されたと思われていた物理学で解けない謎. その謎を解くために様々な物理学者が名探偵として一大推理合戦を開きます. そしてこれらの謎はすべて解き明かされたのです.このとき分かった新たな基本法則,それが量子力学です. おいおいこれらの謎に迫っていきましょう.

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