演算子の性質と交換関係

量子力学にはなくてはならないものの1つが演算子です.その演算子について学びます.演算子とは,関数に作用させて演算を行うもので,量子力学では,さまざまな物理量が演算子で表されます.いきなり演算子と言われても,ぴんとこないと思いますが,例えば,位置を表す x や,運動量を表す p も演算子として扱うことになります.

演算子と数との違い

ある数 a, b がある時,

ab=ba

が成り立ちます.つまり,2つの数の積は交換します.しかし,ある演算子 A, B がある時,一般には

AB\neq BA

であり,2つの演算子の積は交換しません.

演算子の交換関係とは

そこで,演算子 A, B に対して,

[A, B]=AB-BA

という量を定義します.これを演算子 A, B の交換関係といいます.

[A, B]\neq 0

ならば,「演算子 A, B は交換しない」といい,

[A, B]=0

ならば,「演算子 A, B は交換する」といいます.

冒頭で紹介した, xp について,交換関係を計算してみます.量子力学では,(1次元の場合) p=-i\hbar\frac{\partial}{\partial x} とします.ここでは,分かりやすいように,この交換関係が後ろの \phi(x) という関数に作用するとしてみましょう.さらに, xp が演算子であることを強調するために, \hat{x}, \hat{p} と書くことにします.

[\hat{x}, \hat{p}]\phi(x)&=\left[\hat{x}, -i\hbar \frac{\partial}{\partial x}\right]\phi(x)=-i\hbar\left[\hat{x}, \frac{\partial}{\partial x}\right]\phi(x)\\&=-i\hbar\left(\hat{x}\frac{\partial}{\partial x}-\frac{\partial}{\partial x}\hat{x}\right)\phi(x)=-i\hbar\left(x\frac{\partial \phi(x)}{\partial x}-\phi(x)-x\frac{\partial \phi(x)}{\partial x}\right)=i\hbar\phi(x)

となって,

[\hat{x}, \hat{p}]\phi(x)=i\hbar\phi(x)

つまり,

[\hat{x}, \hat{p}]=i\hbar

と求まります. \frac{\partial}{\partial x}\hat{x} をすぐに 1 としてしまいがちですが, \frac{\partial}{\partial x} は後ろの \phi(x) にもかかっていますので,上記のような計算結果となります.

演算子 A, B, C があるとき,交換関係について,以下の式が成り立つことを示しなさい.

[A, BC]=[A, B]C+B[A, C]
[AB, C]=A[B, C]+[A, C]B