cast
登場人物
ねこ大王: ねこランド王国の大王.最近は物理に興味をもちはじめている.寝るのが好き.屈託がなくやや飽きっぽい性格.性別不明.
先生: ねこ大王の先生.いろいろ詳しい.おおらかだが強引.かぎしっぽ.
今日はポテンシャルについて教えて.
うん? ポテンシャルなんて言葉良く知ってますね.
掲示板で見かけたんだ.
ああ,そうでしたか.
ではまず,ポテンシャルをイメージするため,垂直な滝を思い浮かべてください.
は?
…….えー,こんな感じです.
あー,崖から水が落ちてるみたい.水が落ちることをポテンシャルっていうん?
いや違います.水ではなく崖に注目してください.滝の水は崖が高いほど勢い落ちるというのは,なんとなくわかりますね? ポテンシャルっていうのは,滝の水が落ちるための高低差みたいなものととらえてください.
あー,ちょっとわかるようになったかも.
でも水が下に向かって落ちるのは何で?
いい質問です.それは,水が重力を受けているからで,重力の働く向きが下向きだからです.いま言いましたポテンシャルというのは,もうちょっと正確にいうと重力のポテンシャルです.重力のことは知っていますね?
あー.
知ってるんですか,知らないんですか.どっちなんですか?
知ってる(聞いたことはある).
重力というのは,高い方から低い方に向かって働きます.上にあるものは下に落ちるでしょう?
うんうん.上り詰めると後は堕落するか引きずり降ろされるかどっちかだからね.
なんかヤな表現ですね.
重力以外にもポテンシャルはあるん?
あります.重力の他にも「クーロン力」や「磁力」などのポテンシャルが存在します.
はあ.「クーロンリョク」ヤ「ジリョク」ナドノポテンシャルガソンザイシマスカー.
つまりですね,重力のポテンシャルがあるとそのポテンシャルが高い方から低い方に力を受けます.同じように,クーロン力のポテンシャルがあるとクーロン力のポテンシャルが高い方から低い方に力を受けます.磁力の場合も同様です.
クーロンとか磁力とかはよくわかんないけど,まあいいや.
そうですね.ポテンシャルの高い方から低い方に力を受ける,ということだけ覚えといてください.
いままで単に「ポテンシャル」と言ってきたものは,正確にいうと「ポテンシャルエネルギー」です.
今さら何? 詐欺?
(無視.)普通の(重力の)滝の話に戻りましょうか.崖の上はポテンシャルエネルギーが大きくて,崖の下はポテンシャルエネルギーが小さいのです.そして崖の上にある水は,エネルギーの大きい方から小さい方に力を受けて動くので,滝は水がドドドと下に落ちているのです.エネルギーの大きさについては数値で表すことができます.水だとつかみどころがなさそうでややこしいので,ボールを考えてみます.ボールの質量を ,坂の下から上までの高低差を ,重力加速度を とすると,ポテンシャルエネルギー は
で表すことができます.
げ.
何ですか?
数式きらい.そもそも猫が数式使ってるのがおかしい.
それを言っちゃあおしまいです.
ところで,ポテンシャルを考えるときはどこを基準にとるかが大事です.
えー?
滝の例でみたように,ポテンシャルはある点とある点の「差」に意味があります.「崖の上」と「崖の下」,「坂の上」と「坂の下」というふうに.
坂の上といえば,『坂の上の雲』って本を前に読んだよ.でも途中で挫折しちゃった.
(無視.)ポテンシャルの大小を考えるとき,どこを基準とするかは自由です.普通は無限遠でゼロになるように基準点をとることが多いです.
眠くなってきちゃった.
そうですね.ポテンシャルに興味が持てたら,本など読んで詳しく勉強してみると良いですね.では本日はこれにて.
どんな本を読んだらいいん? 『坂の上の雲』なら持っているけど,途中で挫……
あ,その話はもう聞いたんでいいです.
冷たっ.
ポテンシャルエネルギーについての説明は,力学の本ならどんな本でも載っていますよ.『 橋元流解法の大原則 』や『 力と数学のはなし 』なんかは分かりやすかったですね.