単振動 〜等速円運動の射影〜

単振動 [*] は,物理学のいろいろな場面で登場する重要な運動です.ばねの運動で登場したり, 振り子の運動で登場したり,はたまた電気振動なんていうものもあります. 以下では,等速円運動の射影として単振動を紹介し,速度や加速度についてもみていきます. 等速円運動 についてまだ学習していない人は,そちらからご覧下さい.

[*]「単振動」という表現の他に,「調和振動」という表現もよく使います.「単振動」と「(1次元)調和振動」は同じものを指します.また,「調和振動子」と言った場合には,振動しているもの(振動の性質をもつもの)を指します.

単振動は等速円運動の射影だ

半径 A の円周上を運動する 等速円運動 を考えます.分かりやすいように, x-y 平面状に原点を中心とする 半径 A の円を描いておきます.物体は時刻 t=0 のとき点 (A, 0) を出発して,角速度 \omega で運動します.

tomo-shm-fig1.png

この等速円運動について, y 軸への射影を考えてみましょう.時間を追って図を描くと,以下のようになります( T は周期).

  • t=\frac{1}{4}T
tomo-shm-fig2.png
  • t=\frac{1}{2}T
tomo-shm-fig3.png
  • t=\frac{3}{4}T
tomo-shm-fig4.png
  • t=T
tomo-shm-fig5.png

この y 軸への射影こそが,単振動だというわけです.

変位はどのように表されるか

変位 y がどのように表されるか,考えてみましょう.時刻 t=0 のとき 点 (A, 0) を出発して,角速度 \omega で運動した場合, t[{\rm s}] 後には以下のようになっているはずです.

tomo-shm-fig6.png

つまり,変位 y は,

y=A\sin \omega t

と表されることになります. A のことを「振幅」, \sin の中身(ここでは \omega t )のことを「位相」と呼びます.

速度と加速度はどのように表されるか

単振動の速度 v_y と単振動の加速度 a_y はどのようになっているでしょうか. 図で示すと以下のようになります.速度 v ,加速度 a を,変位と同様に y 軸に射影します.

tomo-shm-fig7.png

v=A\omegay 軸に射影して,

v_y=r\omega \cos \omega t

a=A\omega ^2y 軸に射影して,

a_y=-r\omega ^2 \sin \omega t

となります.また,位相の部分を \omega =\frac{2\pi}{T} (説明は 等速円運動 を参照)を用いて,

y=A\sin \frac{2\pi}{T}t
v_y=A\omega \cos \frac{2\pi}{T}t
a_y=-A\omega ^2 \sin \frac{2\pi}{T}t

と書き換えることができます. yv_ya_y を並べてグラフに描くと以下のようになります.

tomo-shm-fig8.png

補足

高等学校の物理では微積分が出てきませんが,

v_y=\frac{dy}{dt}
a_y=\frac{dv_y}{dt}=\frac{d^2y}{dt^2}

という関係が成り立っています.