プトレマイオスの天動説

天動説,という言葉は広く知られています.地球は動いておらず,地球は世界(昔の言葉でいう世界とは現在の宇宙を指します)の中心に鎮座し,その周りを太陽やらの天体が動いているというとても素直な説です.地球が,すなわちあなたの住んでいる家も,部屋も,椅子も,パソコンのモニタもあなたと一緒に高速で動いているだなんて普通は考えられません.だから地球は動いておらず,動いているのは天なのだ,というスタンスです.

この天動説は素朴な考えなのでずっと以前からあったのですが, 2世紀ごろ,アレキサンドリア王朝の時代に天文学者プトレマイオスがきちんと体系化しています.地球は世界の中心でじっとしているという仮定のもと,少しの観測結果と大きな思考でつくりあげられたといいます.ここで少しの観測結果といったのは,後のティコブラーエやケプラーが厳密な観測を寄りどころにしたことと対比させるためです.


当時から星には恒星と惑星があることが分かっていました.恒星というのは太陽や,星座をつくっているはるか彼方の恒にひかり輝いている星です.夜空をボケっと眺めていると星が少しずつ動いていることが分かりますが,星座はずっと同じ形を保っています. 1年を通じて少しずつ見える星座は変わりますが,星座を構成する星の位置関係は変わっていません.まるでなにか球状のものに星がへばりついて,その球ごと,ごっそりと星座が動いているようです.この球は天球と呼ばれます.

しかし火星とか金星とかはそうではなく,あるときは恒星を追い抜き,あるときは逆戻りし,いきあたりばったりに動いているように見えます.いや,僕はちゃんと見たことないですけど,そうらしいです.そんなわけで金星や火星は戸惑う星,惑星と名付けられています.恒星しか見えてなかったら天球がごっそり地球を中心に回転している,で話は簡単だったのですが,惑星のことを知っていたばかりにそれでは話が片付きませんでした.


そこでプトレマイオスくんは,惑星を2つの円運動の合成として考えました.まず地球を中心にした円周を考えます.つぎに,その円周をさらに小さな円周が回っていると考えます.

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これによって,あるときは逆行したりする惑星の運動を説明していました.小さい方は円周を回るので「周転円」,大きい方の円は小さいのを運ぶから「搬送円」と呼ばれます.なんだか複雑なことになっていますが,とりあえず当時の観測精度ではこれで説明がついたのでした.

このプトレマイオスの天動説は多くの人たちに受け入れられ,長い間浸透していました.しかしそれをくつがえしたのがコペルニクスです.天ではなく地球が動いているという,コペルニクスの地動説です.現在では,太陽の周りを地球が動いているなんて誰でも知っていますが,天が動いていようと地球が動いていようと,普通生活しているぶんには直接感じることはないですよね.ではでは,どうしてコペルニクスは地動説を思いついたのでしょうか( コペルニクスの地動説 へつづく).