ガリレオ・ガリレイ

ガリレオ・ガリレイ,「それでも地球は動いている」と言ったらしい彼の名前はあまりにも有名です.聞いたことのない人は少ないでしょう.ケプラーが天体運動の考察で活躍したのとほぼ同時期に,ガリレオは地上の物体の運動を考えていました.彼は「ピサの斜塔」で有名なイタリアのピサに生まれています.

ガリレオの最も偉大な業績は,「実験」という手法をとり入れたことです.天井からぶら下がったランプが風で揺れているのを観て,自身の心拍数により揺れをカウントし,その周期が一定であることを確かめたといいます.物が落ちる運動を,斜面をころがる球の運動と置き換えて観察し,その速度の変化を調べたことも有名です.

ケプラーの師,ティコも天体の運行を精密に観測しているので,これも実験とは言えますが,これはあくまで観測であります.ガリレオのように,自然界に積極的に働きかけ,その結果を調べる行為はこれまでに行われていなかった手法でした.現在の常識からは信じられませんが,そうなのです.ガリレオの時代以降,物理学の「観察に拠りどころを求めつつ自然の法則を追求する」という精神が生まれました.

重い物が先に落ちる?

重い物と軽い物を同時に落としたら,重い物が先に地面に落ちる.これは正しいですか?今ではこの考えが「正しくない」のは常識となっています.確かに質量が大きいと重力も大きくなりますが,同時に物体を動かすために必要な力も大きくなるので,結局落ちるスピードは同じになるのです.ところがガリレオの時代以前には,重い方が先に落ちるに決まっている,というのが常識でした.

ガリレオは実際に高い所から,重さの違う物体を落として時間を測ってみるという実験を行っています.まず鉛球と木片を同時に落としました.少しの時間だけ,鉛球の方が先に地面につきました.つぎに鉛球と石を同時に落としました.今度は両方ともほぼ同時に地面に到着しました.それでガリレオは,物質の落ちる速さは重さには関係ない,と結論を下しました.

え,やっぱりちょっとは重い方が先に落ちるんじゃないかって?ガリレオはその答えもちゃんと用意しています.物の落ちる速さは重さによらず,わずかな差は空気の抵抗によるものだという結論です.現在では真空技術が発達しているので,空気の抵抗がほとんどない状態で羽毛と鉛球を落として,両者の落ちるまでの時間に差がないことが確かめられています.

慣性の法則

慣性の法則はニュートンの運動法則に含まれています.それとは厳密には異なるのですが,ガリレオも慣性の法則を発見しています.彼のおおかたの考えはこうです.まず,鏡のように滑らかな面に,重くて硬い球があるとします.ここでは面を弯曲させておきましょう.

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このとき球を離すとどうなるかというと,おそらく同じ高さに登るまで運動します.

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弯曲の度合を変えてみます.

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やはり球は同じ高さに登るまで運動しようとするでしょう.このとき,先ほどと同じ高さになるまで,球は少し遠くまで進みます.では,片方を水平にするとどうなるでしょうか.

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球は離されたときと同じ高さにまで登ろうとしますが,この先どこまで行っても高さは変化しません.すると球はどうなるのか.高さが変化しない限り,つまり運動を妨げる力を受けない限り,運動を続けます.動いているものはずっと運動を続ける,これはまさに慣性の法則です.しかしガリレオのいう水平面は地球上の面のことですので,地平面,すなわち円のことです.なのでガリレオのいう慣性運動は円運動であって,ニュートンのいう直線運動とは違っています.

ガリレオの業績はたくさんあるのですが,今回はこれくらいにしておきます.つぎはニュートン力学を打ち立てた偉大な物理学者,アイザック・ニュートンの話に移ります( 万有引力の発見 へつづく).