コペルニクスの地動説

地球を中心に天が動いているというプトレマイオスの天動説は,当時の観測精度での天体の運航を説明でき, 16世紀に至るまで人々の支持を得ていました.しかし新しく地動説を唱えた人がいました.コペルニクスです.地球が中心なのではなく,太陽を中心にして水星,金星,地球,火星,木星がまわっているというプトレマイオスの対極に位置する考えです.

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コペルニクスがこのように考えたのは,「こちらのほうが簡単に説明できる」という理由からです.プトレマイオスのいうように円の上をさらに円がまわっている説よりも,太陽を中心にして僕たちの住む地球も他の惑星と同じようにまわっている,と考えたほうがよりスッキリ説明できます.つまり天体が一日ごとに動く運動(日周運動)は地球の自転による見かけ上の運動で,天体が一年ごとに動く運動(年周運動)は地球が太陽のまわりを一年かけて動く公転による見かけ上の運動だとするのです.

もちろんこうした考えに反発する人も多くいました.その理由の一つに,「星座の位置関係はくずれないじゃないか,地球が動いているのなら星座は地球の位置によって変わるはずだ」というものがあります.まあもっともな意見です.しかしコペルニクスはこう答えました.

「地球からみて星座を形づくっている恒星はとても遠い場所にあるので,地球が太陽のまわりを円運動していてもほとんどみえる位置に差はない」といった感じの答えです.たとえば車に乗って移動しているとき,近くのガードレールなどはものすごい速さで通り過ぎていきます.しかし遠くのビルや山の位置はゆっくりと変わっていきます.夜なら空に浮かぶ月が見えるでしょう.月が車を追いかけてきている,という感覚を子供時代に覚えた人は多いのではないでしょうか.

これと同じように,地球が動く距離に対して恒星までの距離はものすごく大きいので,地球が少々動いても恒星の位置の(見かけ上の)移動はものすごく小さいのです.

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これは当時の観測技術で測ることのできない差だったので,地球が動いても星座の位置関係は変わらない,となったのです.


地動説は天動説に比べてはるかに明解な世界観を人々に与えました.そして自然に対する人間の始点を地球に止めることなく,宇宙にまで開放した画期的考えです.この地動説に「こちらのほうが簡単に説明できる」というもの以上の意味を与えたのが,半世紀後に活躍するケプラーによって発見された法則です.ちなみにコペルニクスもケプラーも占星術師でした( ティコ・ブラーエとケプラー へつづく).