三角関数の微分1

三角関数を続けて微分して行くと, \sin\cos の繰り返しになりますよね. たとえば, \sin(x) の微分は

\frac{d}{dx}\sin(x) = \cos(x)

ですし, \cos(x) の微分は

\frac{d}{dx}\cos(x) = -\sin(x)

です.2階微分,3階微分となると,これがどんどん繰り返されていくわけです. 使っているうちに公式として覚えてしまいますが, そもそも三角関数の微分とは何を意味しているのでしょうか. ここでは,できるだけ視覚的なイメージから,三角関数の微分の意味をとらえて行きたいと思います.

sin(x) の接線の傾き

f(x)=\sin(x) のグラフはつぎのようなものです.

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縦軸に \sin(x) ,横軸に x をとっています.微分とはそもそも,接線の傾き(の関数)を求める操作です. このグラフに,接線の傾きを書き込みますと

fig2.png

というふうになります.この接線の傾きに注目しましょう. \sin(x) のグラフ自体が x 軸と交わる部分,すなわち x=0, \pi, 2\pi で, 接線の傾きが最大もしくは最小になることが分かります. 傾きが最大,というのは最も急に右上に傾いている部分,ということです.

fig3.png

また,接線の傾きがゼロになるのは x=\frac{\pi}{2},\, \frac{3\pi}{2} の点です.

fig4.png

sin(x) の微分のグラフ

微分のグラフとは,この接線の傾きのグラフです. 縦軸のスケールは気にしないでおいて,接線の傾きの情報をグラフにてみます. 横軸は先ほどと同じ,縦軸には \frac{df(x)}{dx} ,つまり接線の傾きをとります. 傾きの最大,最小,ゼロの情報から,つぎのように点を打てます.

fig5.png

さらに,それぞれの点の間の中途半端な部分も点で埋めます. 最初に \sin(x) のグラフの接線の傾きを描いてみましたから, なんとなくつぎのようになることが分かると思います.

fig6.png

さらに点をたくさん打ちまして,滑らかにつなぐと

fig7.png

というものになります.これは見たことありますね. \cos(x) のグラフです. これで, \sin(x) の微分が \cos(x) になるということが, グラフの直感的イメージから導かれたことになります.

cos(x) の微分のグラフ

f(x)=\cos(x) のグラフに対して,同様のことを行ってみます. すると最終的にはつぎのグラフが得られます.

fig8.png

これは \sin(x) のグラフと比べて上下が正反対ですから, -\sin(x) のグラフである, と言うことができます.したがって, \cos(x) の微分は -\sin(x) であるということも分かりました.

「微分とは接線の傾きである」というイメージさえつかんでいれば, このように三角関数の微分も,図形から直感的に理解することが可能です.