正方行列の基本性質

行と列が一致している行列 ( n \times n 行列) のことを正方行列と呼びます.正方行列は

という特徴を持っています(ただし,これらが定義できない特別な場合もあります).

単位行列

左上から右下への対角線が全て 1 で, 他の成分が全て 0 の正方行列を単位行列といいます. 単位行列は普通, E という記号で表します.例えば 2 \times 2 正方行列の単位行列は

\begin{pmatrix}1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}

で, 3 \times 3 正方行列の単位行列は

\begin{pmatrix}1 & 0 & 0\\ 0 & 1 & 0\\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}

となります.

また,どんな n \times n 正方行列に n \times n 単位行列を掛けても変化しません. つまり,正方行列を A とすると

AE=EA=A

がいえます.この性質は数字の 1 と同じです.どんな数に 1 を掛けても,変化しませんよね.

逆行列

行列の逆数に相当するのが逆行列です.正方行列 A の逆行列を P とすると

AP=E

が満たされます.ここで E はさきほどの単位行列です.普通の数字で例えるなら

7 \times 7^{-1} = 1

ということと同じようなものです.

2 \times 2 正方行列

A=\begin{pmatrix}a & b\\ c & d \end{pmatrix}

の逆行列は以下の公式から求められます.

A^{-1}=\frac{1}{ad-bc}\begin{pmatrix}d & -b \\ -c & a \end{pmatrix}

このように A の逆行列は A^{-1} と書きます.読み方は「えーいんばーす」が一般的です.