グリーン関数と逆行列

グリーン関数と逆行列の類似性について書きます.

グリーン関数

演算子 L (ただし L は, x についての演算子) と既知関数 f(x) ,未知関数 \psi(x) があり以下の関係を満たすとします.

L\psi(x)=f(x) \tag{1}

ここで,グリーン関数 G(x-x^\prime) を 次の性質を持つ関数として, 定義します [*]

LG(x-x^\prime)=-\delta(x-x^\prime) \tag{2}
[*]その求め方はここでは書きません.普通の演算子 L に対してそんな関数が存在するということだけを知っておいてください.

これを使って,形式的に次のように書きます.

G(x-x^\prime)=- L^{-1}\delta(x-x^\prime) \tag{3}

すると,結局未知関数 \psi(x) は次のように求まります.

\psi(x) &= - \int L^{-1} \{ \delta(x-x^\prime) \} f(x^\prime) dx^\prime \\&= \int G(x-x^\prime) f(x^\prime) dx^\prime \tag{4}

ここで,式 (1) を確認しておきましょう. 式 (4) の両辺に L を作用させます. すると, Lx のみに関わるので,

L \psi(x) &= - \int L \{ L^{-1} \{ \delta(x-x^\prime) \} \} f(x^\prime) dx^\prime \\&= \int \delta(x-x^\prime) f(x^\prime) dx^\prime \\&= f(x) \tag{5}

となり,確かに式 (1) が成立していることが分かります.

逆行列

一方,有限次元の逆行列を持つ行列 A , 既知ベクトル \bm{f} , 未知ベクトル \bm{x} について, 次のような方程式を考えます.

A\bm{x}=\bm{f} \tag{6}

ここで,グリーン関数の行列版とでも言えるような, 次のベクトル群 \bm{g}_i を導入します.

A\bm{g}_1=\begin{pmatrix}1 \\0 \\\vdots\end{pmatrix} \equiv \bm{d}_1\tag{7} A\bm{g}_2=\begin{pmatrix}0 \\1 \\\vdots\end{pmatrix} \equiv \bm{d}_2\tag{8}

すると,

\bm{f} =\sum_i f_i A \bm{g}_i \tag{9}

ですから,

\bm{x} &= A^{-1} \bm{f} \\ &= A^{-1} \sum_i f_i A \bm{g}_i \\&= \sum_i f_i \bm{g}_i \\&= \sum_i \bm{g}_i f_i \tag{10}

と表せます.ここで, f_i はベクトル \bm{f} の第 i 成分 です. ここで,比較のため,式 (4) をもう一度書きます.

\psi(x) = \int G(x-x^\prime) f(x^\prime) dx^\prime \tag{4}

きれいに二つが対応しているのが見てとれますね. というのは,つまり,δ関数 \bm{d}_i に逆作用素(逆行列) A^{-1} を掛けると, グリーン関数 \bm{g}_i になります.一方,非斉次項の f(x) に対応するのが, f_i なわけです.

それでは,今日はこの辺で.