この記事では,確率・統計で使われる,ガウス分布のモーメント計算を簡単にする為のテクニックを紹介します.
ちなみに,
は,既知であるとします.ご存知のない方は,COさんの, ガウス積分の公式 をご覧ください.
分布関数 に対し, 次( は整数)のモーメント とは,
で定義されます.ここで,式 の分母は正規化を表しており,
とすれば,分布関数 は総和が に等しいので, 変数 での値を取る時の確率が となっています.
ところで,ガウス分布とは実数 として,
という釣鐘(つりがね)型の分布関数をした分布です.この関数のことをガウス関数,または,ガウシアンと呼びます. グラフにすると
と,このようになります.パラメータの は,大きいほど原点に局在する鋭い分布関数になります.
ここで,ガウス分布に関するモーメントを考えてみましょう.モーメントを表す括弧に の添え字をつけて, ガウス分布であることを表示しておきます.
ちなみに,
は,既知であるとします.
すると,まず 次のモーメントは,
となります.これは簡単でしたね.
次は, 次のモーメントです.
は,
ですから,
より,
です.一般にガウス関数の奇数次のモーメントは奇関数の積分範囲が原点対称な積分ですから, ゼロとなります.もし,どうしても計算で示したいときは, と置換積分を行うとよいでしょう.
それでは, 次のモーメントを求めます. それは部分積分を利用します.
よって, 次のモーメントは,
非負の整数 に対して, は部分積分を繰り返すことで, 求めることができます.
と,ここまでモーメントの計算をしてきましたが, 実は簡単に済ませる方法があるのです.それには,
と書けることを利用します. での積分と での積分を入れ替えます. つまり,
よって,
となり,
となり,一般に,
となることが分かります. ただし,
です.それでは,今日はこの辺で.お疲れ様でした.