行列式

行列式についての定義,そしてそれを展開する方法,ベクトル積との関係について説明します.

行列式の定義

\bm{A} = \begin{pmatrix}a & b\\ c & d \end{pmatrix}

という行列 \bm{A} があった場合,行列式はつぎのように定義されます.

\vert \bm{A} \vert = \begin{vmatrix}a & b\\ c & d \end{vmatrix} =ad-bc

行列式は行列の成分同士の演算ですから,ベクトルではなく単なる値(スカラー量)です. 下のように書いても,上式と同じ意味です.

\mathrm{det}\,\bm{A} = \mathrm{det} \begin{pmatrix}a & b\\ c & d \end{pmatrix} =ad-bc

また, det とは行列式を表す単語 determinant の略です.

行列式の展開

定義から2次の行列式ならすぐに求めることができますが, 3次以上の場合にはそうもいきません. そこで,3次以上の行列式を2次以下に展開する方法があります. それは小行列式展開と呼ばれる方法です.たとえば,つぎのように展開できます.

\begin{vmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13}\\ a_{21} & a_{22} & a_{23}\\ a_{31} & a_{32} & a_{33}\end{vmatrix} = a_{11}\begin{vmatrix}      a_{22} & a_{23}\\       a_{32} & a_{33}        \end{vmatrix} - a_{21}\begin{vmatrix}    a_{12} & a_{13}\\       a_{32} & a_{33}        \end{vmatrix} + a_{31}\begin{vmatrix}    a_{12} & a_{13}\\       a_{22} & a_{23}        \end{vmatrix}

何をやっているのか良く分かりませんね. これは第1列について展開しているんですが, じっくり見ると規則性があることに気付きます.

係数について見てみます.まずは a_{11} についてです.

fig-a11.png

右辺第1項の係数には a_{11} が出てきてます. そしてそれに付随する小行列式は a_{11} が含まれている 1行目と1列目が取り除かれた形になってます.

a_{21},a_{31} についても同様のことがいえます.

fig-21 fig-31

符号について見てみます.第1行1列(左上)をプラス, そこから下または右に1つ進むと符号が反転すると決められています. たとえば a_{11} は左上にあるのでプラス, a_{21} は1つ下に行くのでマイナス, a_{31} は2つ下に行くのでプラスになります.

fig-pm.png

係数と符号は第1列以外で展開しても全く同じように成り立ちます. たとえば第2行で展開すれば

\begin{vmatrix}  a_{11} & a_{12} & a_{13}\\  a_{21} & a_{22} & a_{23}\\  a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{vmatrix} = - a_{21}\begin{vmatrix}       a_{12} & a_{13}\\       a_{32} & a_{33}        \end{vmatrix} + a_{22}\begin{vmatrix}    a_{11} & a_{13}\\       a_{31} & a_{33}        \end{vmatrix} - a_{23}\begin{vmatrix}    a_{11} & a_{12}\\       a_{31} & a_{32}        \end{vmatrix}

となります.

ベクトル積と行列式

覚えにくいベクトル積も,行列式を使えば簡単に覚える事ができます.ベクトル積の定義は

\bm{A}\times\bm{B} = (A_yB_z-A_zB_y)\bm{i}+(A_zB_x-A_xB_z)\bm{j}+(A_xB_y-A_yB_z)\bm{k}

です.慣れないうちは各成分の中身がこんがらがってしまいます. でもよく見てみると行列式で書けることに気付きます. (A_yB_z-A_zB_y) は行列式で書くと \begin{vmatrix}A_y & A_z\\ B_y & B_z\end{vmatrix} ですね (よく分からなければ逆に行列式を計算して確かめてみてください). 同様に他の成分も行列式で書くと

\bm{A}\times\bm{B}  =\begin{vmatrix}A_y & A_z\\B_y & B_z\end{vmatrix}\bm{i}  +\begin{vmatrix}A_z & A_x\\B_z & B_x\end{vmatrix}\bm{j}  +\begin{vmatrix}A_x & A_y\\B_x & B_y\end{vmatrix}\bm{k}

となります.少し覚えやすそうになりました. さらに,先ほどの小行列式展開の逆を行います (この操作の前にjの符号を変えています.理由はあとで分かります).

\bm{A}\times\bm{B} =\begin{vmatrix}\bm{i}&\bm{j}&\bm{k}\\ A_x&A_y&A_z\\ B_x&B_y&B_z\end{vmatrix}

行ごとに ijkxyz と順番に並んでいるので,これなら覚えやすいです. ベクトル積の成分を使うときにはこれを展開して2次の行列式にしてやり, 行列式の計算をすればいいわけです. ためしに展開してもとに戻してみます. i, j, k に着目して展開するとそれぞれの係数は

fig-ABi fig-ABj fig-ABk

ですから

\begin{vmatrix}\bm{i}&\bm{j}&\bm{k}\\A_x&A_y&A_z\\B_x&B_y&B_z\end{vmatrix} &=  \bm{i}\begin{vmatrix}A_y&A_z\\B_y&B_z\end{vmatrix}    -\bm{j}\begin{vmatrix}A_x&A_z\\B_x&B_z\end{vmatrix}    +\bm{k}\begin{vmatrix}A_x&A_y\\B_x&B_y\end{vmatrix}\\ &=(A_yB_z-A_zB_y)\bm{i}-(A_xB_z-A_zB_x)\bm{j}+(A_xB_y-A_yB_z)\bm{k}\\ &=(A_yB_z-A_zB_y)\bm{i}+(A_zB_x-A_xB_z)\bm{j}+(A_xB_y-A_yB_z)\bm{k}

となり,元に戻りましたね. j の符号を変えた理由も分かると思います.

rotと行列式

ベクトル積と同様にベクトル解析のrotも行列式で覚えられます.

fig-rotAi fig-rotAj fig-rotAk

より

\mathrm{rot}\,\bm{A} &=\nabla\times\bm{A}\\ &= \begin{vmatrix}     \bm{i}&\bm{j}&\bm{k}\\     \partial/\partial x & \partial/\partial y & \partial/\partial z\\     A_x & A_y & A_z    \end{vmatrix}\\ &=  \bm{i}\begin{vmatrix}          \partial/\partial y  & \partial/\partial z\\            A_y & A_z     \end{vmatrix}    -\bm{j}\begin{vmatrix}           \partial/\partial x  & \partial/\partial z\\            A_x & A_z      \end{vmatrix}    +\bm{k}\begin{vmatrix}          \partial/\partial x  & \partial/\partial y\\            A_x & A_y      \end{vmatrix}\\ &= \left(\frac{\partial A_z}{\partial y}-\frac{\partial A_y}{\partial z}\right)\bm{i}   -\left(\frac{\partial A_z}{\partial x}-\frac{\partial A_x}{\partial z}\right)\bm{j}   +\left(\frac{\partial A_y}{\partial x}-\frac{\partial A_x}{\partial y}\right)\bm{k}

のように表記することができます.