電磁場のローレンツ変換

この記事では速度と力のローレンツ変換を既知として, 電場 \bm{E} と磁束密度 \bm{B} のローレンツ変換を求めます.

想定する状況と前提知識

速度のローレンツ変換

まず,慣性系の一つK系を考えます. 次にx軸方向に V の速度で動く別の慣性系K'系を考えます. また,粒子がK系では \bm{v}=(v_x,v_y,v_z) で動いているものとし, K'系ではその粒子が \bm{v}^\prime = (v_x^\prime,v_y^\prime,v_z^\prime) で動いているとします.

この時, \Gamma = \dfrac{1}{\sqrt{1-V^2/c^2}} として,

v_x^\prime &= \dfrac{v_x-V}{1-\dfrac{v_xV}{c^2}} \tag{1} \\v_y^\prime &= \dfrac{v_y}{\Gamma \left( 1-\dfrac{v_xV}{c^2} \right) } \tag{2} \\v_z^\prime &= \dfrac{v_z}{\Gamma \left( 1-\dfrac{v_xV}{c^2} \right) } \tag{3}

の関係があります.

力のローレンツ変換

運動方程式は,次の様になります.

\dfrac{d\bm{p}}{dt} = \bm{F} \tag{4}

ただし, \bm{p} は四元運動量の空間成分, \bm{F} は力です. K系での粒子の速度を \bm{v} , \gamma=\dfrac{1}{1-v^2/c^2} とすると,

p^\mu = (E/c,\bm{p}) = (m \gamma c, m \gamma v_x, m \gamma v_y, m \gamma v_z ) \tag{5}

となります.K'系で力を \bm{F}^\prime

F_x^\prime &= \dfrac{F_x-\dfrac{V}{c^2} \bm{v} \cdot \bm{F}}{1-\dfrac{v_xV}{c^2}} \tag{6} \\F_x^\prime &= \dfrac{F_y}{\Gamma \left( 1-\dfrac{v_xV}{c^2} \right) } \tag{7} \\F_x^\prime &= \dfrac{F_z}{\Gamma \left( 1-\dfrac{v_xV}{c^2} \right) } \tag{8}

と言う関係があります.

電磁場のローレンツ変換

x軸方向の成分の変換

さて,K系,K'系を同様に設定して,電荷 q の荷電粒子 A がK系に対して x 軸方向に \bm{v} = (v_x,0,0) で運動しているとしても一般性は失われません.(最後の結論を見ていだければ明らかです.) A に働く電磁気力は

\bm{F} = q(\bm{E}+\dfrac{\bm{v}}{c} \times \bm{B}) \tag{9}

です.物理法則は不変なはずなので, これをK'系で見ると,

\bm{F}^\prime = q(\bm{E}^\prime+\dfrac{\bm{v}^\prime}{c} \times \bm{B}^\prime) \tag{10}

となります.式 (6) から力のの変換則は \bm{v} \cdot \bm{F} \to v_x F_x から,

F_x^\prime &= \dfrac{F_x-\dfrac{v_xV}{c^2}F_x}{1-\dfrac{v_xV}{c^2}} \\&= F_x \tag{11}

となるので,

q E_x^\prime = q E_x \tag{12}

より,

E_x^\prime = E_x \tag{13}

となります.x軸方向については B_x^\primeB_x の関係も欲しいのですが, どう求めて良いか分かりませんでした.荷電粒子は運動方向の磁束密度とは相互作用を起こさない為です. 参考文献には

B_x^\prime = B_x \tag{14}

とあります.

z軸方向の成分の変換

まずは, \alpha=\dfrac{v_x}{c},\beta=\dfrac{V}{c} とします.この時,式 (8) より,

F_z^\prime = \dfrac{\sqrt{1-\beta^2}}{1 - \alpha \beta} F_z \tag{15}

となります.よって,

q \left( E_z^\prime + \dfrac{v_x^\prime}{c} B_y^\prime \right) = q \dfrac{\sqrt{1-\beta^2}}{1 - \alpha \beta} \left(E_z + \dfrac{v_x}{c} B_y \right) \tag{16}

となり,式 (1) から,

\dfrac{v_x^\prime}{c} = \dfrac{\alpha - \beta}{1 - \alpha \beta} \tag{17}

ですから,式 (16) を書き直すと,

E_z^\prime + \dfrac{\alpha - \beta}{1 - \alpha \beta} B_y^\prime = \dfrac{\sqrt{1-\beta^2}}{1 - \alpha \beta} \left(E_z + \alpha B_y \right) \tag{18}

となります.

ここで,式 (18) の自由度を落とすため, v_x = V \ \ (\alpha=\beta) の時を考えます. すると,

E_z^\prime &= \dfrac{1}{\sqrt{1-\beta^2}} \left(E_z + \beta B_y \right) \\&= \Gamma \left(E_z + \beta B_y \right) \tag{19}

が得られます.(ここでさりげなく \alpha\beta に置き換えていますが,これは \beta \to 0 の極限でロ−レンツ力を再現するようにしています.)次に, \alpha \neq \beta の時を考えると,

E_z^\prime + \dfrac{\alpha - \beta}{1 - \alpha \beta} B_y^\prime &= \dfrac{\sqrt{1-\beta^2}}{1 - \alpha \beta} \left(E_z + \alpha B_y \right) \\&= \Gamma \dfrac{1-\beta^2}{1 - \alpha \beta} \left(E_z + \alpha B_y \right) \\&= \Gamma \dfrac{1-\alpha \beta +\alpha \beta - \beta^2}{1 - \alpha \beta} \left(E_z + \alpha B_y \right) \\&= \Gamma \left(E_z + \alpha B_y \right) + \Gamma \dfrac{\alpha - \beta}{1 - \alpha \beta} \left(\beta E_z + \alpha \beta B_y \right) \\&= \Gamma \left(E_z + \beta B_y + (\alpha - \beta) B_y \right) + \Gamma \dfrac{\alpha - \beta}{1 - \alpha \beta} \left(\beta E_z + \alpha \beta B_y \right) \\&= \Gamma \left(E_z + \beta B_y \right) + \Gamma \dfrac{\alpha - \beta}{1 - \alpha \beta} \left(\beta E_z + \alpha \beta B_y + (1 - \alpha \beta) B_y \right) \\&= \Gamma \left(E_z + \beta B_y \right) +  \dfrac{\alpha - \beta}{1 - \alpha \beta} \Gamma \left(B_y + \beta E_z \right)\tag{20}

ここで, E_z^\prime = \Gamma \left(E_z + \beta B_y \right) でしたから,

B_y^\prime = \Gamma \left(B_y + \beta E_z \right) \tag{21}

が求まりました.

y軸方向も同様に求められます.以上をまとめると,

E_x^\prime &= E_x \\E_y^\prime &= \Gamma \left( E_y - \dfrac{V}{c} B_z \right) \\E_y^\prime &= \Gamma \left( E_z + \dfrac{V}{c} B_y \right) \\B_x^\prime &= B_x \\B_y^\prime &= \Gamma \left( B_y + \dfrac{V}{c} E_z \right) \\B_y^\prime &= \Gamma \left( B_z - \dfrac{V}{c} E_y \right) \tag{22}

となります.これは x 軸方向の運動でしたから, 一般には,運動方向に平行な成分を \parallel ,垂直な成分を \perp とすると,

\bm{E}_{\parallel}^\prime &= \bm{E}_{\parallel} \\\bm{E}_{\perp}^\prime &=  \Gamma \left( \bm{E}_{\perp} + \dfrac{\bm{V}}{c} \times \bm{B}_{\perp} \right) \\\bm{B}_{\parallel}^\prime &= \bm{B}_{\parallel} \\\bm{B}_{\perp}^\prime &=  \Gamma \left( \bm{B}_{\perp} - \dfrac{\bm{V}}{c} \times \bm{E}_{\perp} \right) \tag{23}

となります.今日はここまで.お疲れさまでした.