部分環・部分体

環や体の部分集合で,同じ演算に関して同じ構造を持つものを部分環,部分体と呼びます.

Important

R の部分集合 S が, R と同じ加法と乗法について環になるとき, S を部分環と呼びます.

つまり S に属する任意の元 a,b について, a+b \in S, \ ab \in S がなりたつということです.部分体の定義も同様です.

Important

F の部分集合 T が, F の加法と乗法について体になるとき, T を部分体と呼びます.

簡単ですね.

[*]R 自身および零元だけからなる集合 \{0\} はいつでも部分環になります.これを自明な部分環と呼びます.(群で,単位元と群自身はいつでも自明な部分群になることを思い出してください.)体でもやはり,零元だけからなる集合と体自身は,いつでも自明な部分体になります.

例1

整数環 Z は複素数環 C ( C は複素数体でもある)の部分環になっています.

Z \subset C

また複素数体 C ,実数体 R ,有理数 Q の間には次のような包含関係があります.実数体は複素数体の部分体,有理数体は実数体の部分体になっています.

Q \subset R \subset C

例2

整数環 Z で,偶数全体からなる集合 S=\{ -4,-2,0,2,4,6,...\} は部分環になります. S が加法に関して群になることを確認してください.しかし S には 1 が含まれませんから,乗法の単位元はありません.

一般に 可換環の部分環は可換環になります が,環が単位元を持つ単位元だったからといって,その 部分環が単位元を持つとは限りません

部分環の条件

以下の4つの文・式は,環 R の部分集合 S が部分環になることを述べる同値なものです.パッと見,よく分からない条件がある場合は,どうしてそう書けるのか証明してみてください.(群の 部分群 を復習すればヒントになるでしょう.)

  1. SR の部分環である.
  2. a,b \in S \ \longrightarrow \ a+b, \ ab \in S; \ 0 \in S; \ \exists -c \in S \ \ \text{for} \ \ \forall c \in S
  3. a,b \in S \ \longrightarrow \ a+b,\  -a, \ ab \in S
  4. a,b \in S \ \longrightarrow \ -a+b, \ ab \in S

部分体となる条件

同様に,体 F の部分集合 E について,以下の4つの文・式は E が部分体であることを述べる同値なものです.

  1. EF の部分体である.
  2. a,b \in E \ \longrightarrow \ a+b, \ ab \in E; \ 0 \in E; \ e \in E; \  \exists-c \in E \ \text{for} \ \forall c \in E; \ \exists c^{-1} \in E \ \ \text{for} \ \ \forall c \in E
  3. a,b \in E \ \longrightarrow \ a+b, -a+b ab \in E; \ \exists c^{-1} \in E \ \text{for} \ \forall c \in E
  4. a,b \in E \ \longrightarrow \ -a+b \in E;  a^{-1}b \in E

中心

群で勉強した中心という概念は,環や体にもあります.中心は,部分環・部分体になります.定義は同じです.( 群の中心 参照)

Z=\{ z \in R | zy=yz, \  \forall y \in R \}