正規部分群に関する重要な性質や定理を幾つか羅列的に取り上げます.いまここで全て理解できなくても,またいつか正規部分群の性質でつまずいたときに,この記事を参照してして頂ければ良いと思います.
中心は,常に群の正規部分群です.中心 に属する元 が,群に属する任意の元 と の関係を満たすことを考えれば, は明らかでしょう.
群 の正規部分群 が,部分群 に含まれるとします.このとき, は の正規部分群でもあります.
theorem
proof
定義より ならば がなりたつなずなので, は の正規部分群だといえます■
theorem
群 の二つの正規部分群 の共通集合 も正規部分群になります.
proof
いま に含まれる元 を考えると, も も正規部分群であることから,群 の任意の元 に対し, がなりたつので, がいえます. は に含まれる任意の元だったので,全体としては が成り立つと言えます(1).この両辺に,左側から ,右側から を乗ずれば を得ますが,いま は任意の元だったので の代わりに を代入しても良いはずです.すると を得ます(2).(1)(2)より, が要請され, も正規部分群であることが分かります.■
theorem
群 の部分群 と, の正規部分群 の積 は の部分群になります.
proof
いま の任意の元 に対し, がなりたつので が言えます.同様に より がいえるので,結局 が示せます.このとき の任意の元 (ただし , とします)に対し, がいえるので,部分群の定義より は の部分群です.■
部分群に関する元の合同を 剰余類2 で勉強しました. が, を満たすとき, と は に関して左合同であるといい, を満たすとき, と は に関して右合同であると言い, のように書くのでした.
左合同は ,右合同は と書き換えられますが,正規部分群では であるため,左合同と右合同の区別はありません.
また, の場合,何か他の元を作用させても がなりたつはずです( が属するのは とは違う共役類ですが, と は同じはずです).同様に もなりたちます.この二式を併せて,合同の関係にある二組の元 に関して正規部分群 の場合は次式がなりたつことが分かります.
つまり,正規部分群に関する剰余類の間には,乗法が定義できるということです.
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