ここまでに,群の位数と,元の位数という,紛らわしい二つの言葉が出てきました.混乱しやすいので,もう一度定義をおさらいします.
では,先に進みましょう.
有限群 の位数と,その部分群 の位数の間には,ラグランジェの定理と言われる美しい関係が成り立っています.
theorem
群 の部分群の位数は, の位数の約数になる. .
proof
群 の部分群 による類別が のように表わされるとします. は有限群なので,有限個( 個としています)の類によって類別できるはずです.そこで位数について の関係が言えます. を と書くのでしたので, が言えます.■
証明中では,当たり前と考えて言及しませんでしたが,各類に含まれる元の個数が の位数に等しいことが本質的に重要です. から の元を作る という演算は一意的なので, の元と の元の間には一対一対応が成り立ち,元の個数は同じになるわけです.このあと軌道や中心という概念を勉強するとき,ラグランジェの定理が重宝しますので,覚えておくと良いでしょう.
[*] | 実は 剰余類2 で紹介した指数の定理 において と置けばラグランジェの定理になります. |
[†] | ラグランジェの時代には群論はまだ完成していませんでしたが,既に幾つかの具体的な例について,ラグランジェはこの定理に気が付いていたということです.恐るべき慧眼です. |
[‡] | このあたりの記号にまだ慣れていない人は,もう一度 剰余類 や 完全代表系と商集合 の記事を復習してください. |