群論を整数論に応用して得られる一つの結果として,フェルマーの小定理を見ます.フェルマーの小定理は群論を使わなくても証明できますが,ここまでに勉強した群論の知識を使うと,非常にエレガントに証明できてしまいます.
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(フランスの切手にもなっているフェルマー)
整数全体 の整数
の剰余類のうち,
を含む剰余類を除いた集合
を考えます.このとき,
を素数(以後
と書きます)とすると,
は約数を持ちませんから,
は
の剰余類によって次のように書けます.
よって,位数は です.
これがフェルマーの小定理です.簡単でしたね!ただし,整数論の教科書に出てくるのは,次の形です.ここまでの議論は,次の定理の証明になっています.
theorem
整数 を,
の倍数ではない整数とし,
を素数とするとき,
がなりたつ.
この定理で何が分かるのか,ちょっと分かり難いかも知れません.例を考えてみれば,なかなか強力な定理だということが分かると思います.
フェルマーの小定理より, となって,余り
が瞬時に求まります.
[†] | フェルマーの小定理をつかえば,このように,とんでもなく大きな数でも,一瞬で余りが分かってしまいます.素数の判定や暗号理論に欠かせない定理なのです. |
フェルマーの小定理を,群論で使いやすい表現に書き直すと次のようになります.
theorem
群 で
が素数のとき,
がなりたつ.
さらに発展形として,次の定理を考えます.
theorem
群 の位数が素数
の冪
のとき,
がなりたつ.
proof
この場合, と
の間にある,
と互いに素であるような数は,
から
の間にある数のうち,
の倍数,
を除いたものです.このような数は,全部で
個ありますので,
と
の間にある,
と互いに素である整数は全部で
個あると言えます.よって
がなりたちます.■
さらに一般の場合には,次のように定理を拡張できます.
theorem
群 の位数
が
のように素因数分解できるとき,
がなりたつ.
この定理の証明は省略します.これは,このあとに勉強する シローの定理 の一つの表現になっています.