代数的数と超越数

一つの前の記事 代数方程式の性質 で代数方程式を定義しました.

a_{0}x^{n}+a_{1}x^{n-1}+...+a_{n-1}x+a_{n}=0

特に, 有理係数の代数方程式の解代数的数 と呼びます.例えば \sqrt{2}i は, x^{2}-2=0 , x^{2}+1=0 といった有理係数代数方程式の解ですから代数的数です. \root 100\of 2 もやはり x^{100}-2=0 という有理係数代数方程式の解ですから代数的数です.一方, \sqrt{\pi}x^{2}-\pi =0 という代数方程式の解ではありますが,係数 \pi が有理数ではありませんので,この例を見る限り \sqrt{\pi} は代数的数ではありません.

しかし,他に \pi を解とする,有理係数の代数方程式は一切存在しないと言えるのでしょうか?世の中には無限に代数方程式があるわけですから,どんな数だって,何らかの代数方程式の解になっているということないでしょうか?実は,世の中の仕組みはそうはなっていません.どうしても代数方程式の解にはならない数が無数に存在します.これらを 超越数 と呼びます.

超越数の有名な例には \pi , e, 2^{\sqrt{2}} 等があります.ある数が代数的数であることを証明するのは簡単ですが,超越数であることを証明するのはとても難しいことです. \pi が超越数であることの証明は 1882 年,リンデマン( \text{Ferdinand von Lindemann (1852-1939)} )によってなされましたが,とても難しいものだそうです.

Joh-Lindemann.gif

( \pi が超越数であることを証明したリンデマン)

練習問題1

一般に, a+ \root n\of {c} \ b \ (a,b,c \in Q) の形をした数は代数的であることを示して下さい.(ヒント:このような数を x と置いて,移項したり累乗したりして代数方程式を作ってみましょう.)

練習問題2

\cos (k\pi)k が有理数であるときに代数的数であることを示して下さい.(ヒント:加法定理を使ってみましょう.)